弁理士の日々

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1号機格納容器窒素注入の目的は?

2011-04-10 10:37:39 | 知的財産権
1号機の格納容器への窒素ガス注入が行われています。格納容器内での水素爆発を防止する目的だと言われています。
最初、格納容器内を窒素ガスで置換するのだと思っていました。現在の内部ガスを追い出し、その代わりに窒素ガスを入れるのだと。
ただし、内部のガスを窒素に置換するといっても、注入された窒素はすぐに内部の雰囲気に拡散するので、ガスを入れ替えることは不可能であり、せいぜいが半分程度を置換できるに過ぎません。
またガスを置換するためには、格納容器内に存在していたガスを外部に追い出す必要があります。これはまさに「ドライベント」であり、高濃度の放射能が大気中に放出することを意味するので、世界中の国々に事前通告が必要となるでしょう。
しかし、「格納容器内の高汚染ガスを放出する」とのアナウンスは一向になされません。
もし内部のガスを放出せずに窒素を注入するだけだったら、水素と酸素の分圧には変化がないわけですが、それで爆発限界から遠ざかるのかどうかも不明です。

そんなとき、以下のような報道に接しました。
【 2011年4月7日 1号機格納容器に窒素注入 水素爆発防止で 】
『水素とともに原子炉圧力容器から格納容器に漏れ出た水蒸気が格納容器の内壁で凝縮し、格納容器内の気圧が大気圧より低くなる可能性がある。その結果、格納容器内に大気中の酸素が入り込み、たまった水素と反応して格納容器内で水素爆発が起きるという深刻な事態も心配される。
窒素注入は、格納容器内の圧力を高め、外から酸素が入り込まないようにするのが狙い。1号機から窒素注入を始めた理由について東京電力は、2号機、3号機に比べ格納容器の損傷が小さいため、原子炉圧力容器から格納容器に漏れ出た水素と水蒸気が格納容器の内壁で凝縮した際に、格納容器の圧力が大気圧に比べ低くなる可能性がより心配される、と説明している。』
現時点で、格納容器内のガスの主成分は水蒸気だということです。ということは、ガスの温度が下がったら水蒸気は凝縮して液体になり、あっという間に内部は負圧になってしまうでしょう。そうならないように、少なくとも窒素分圧が1気圧になるように窒素を注入しておく、ということで、そう説明されれば理解できます。窒素注入前の格納容器内圧力が1.5気圧absであったものを、窒素注入により2.5気圧absにする、ということです。

しかし、専門家の間でも上記のような理解は共有されているわけではないようです。

ながさんにご紹介されたfm797radiocafeの画像を閲覧してみました。
出演ゲスト:京都大学原子炉実験所 助教 小出裕章先生パーソナリティ;下村委津子(NPO環境市民) 2011年4月8日OA
小出先生は、「格納容器への窒素注入しながら、内部のガスを外に逃がす」と説明していました。

また、小出先生は冒頭で、「1号機格納容器内の放射能レベルが、直近に急増(2~3倍)した。」ということに注目されていました。
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2 コメント

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窒素ガス注入 (ボンゴレ)
2011-04-13 22:11:52
xls-hashimotoさん、貴重な情報をありがとうございます。

容器内を窒素ガスオンリーにして酸素を追い出すのであれば、「不活性化」ということで理解できます。
一方、今回の1号機では、中のガスを追い出すのではなく、窒素注入で全圧を上げています。元から入っていた水蒸気、水素、酸素の分圧は維持したままです。
ところで、ご紹介いただいた資料には爆発限界の酸素と水素の濃度が記載されていますが、雰囲気の全圧が記載されていません。一般であれば「全圧1気圧時に限る」と読みますが、この文書は格納容器が対象であり、圧力は変化します。それにもかかわらず圧力の記載がないと言うことは、「通常の格納容器圧力の範囲内であれば、圧力に依らず、爆発限界は水素と酸素の濃度(%)によって定まる」ということになるのでしょうか。
もしそうであれば、今回の窒素注入は、「内部の水素と酸素の濃度(%)を下げることによって爆発限界から遠ざける」という意味もありそうです。
返信する
1号機格納容器窒素注入の目的は? (xls-hashimoto)
2011-04-13 00:43:20
下記URLに、電気事業連合会が出した
「BWRにおける水素対策について」
とタイトルの付いた資料があります。

http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/kakunou/2/siryo1.pdf

その3ページ目に、次の様に記載されています。
《濃度制御》
通常運転時:不活性ガス系
 格納容器(PCV)内をN2(窒素)で不活性化し、維持するシステム
事故(LOCA)時:FCS
 PCV(格納容器)内の水素と酸素を再結合させるシステム
 ※FCS:可燃性ガス濃度制御系(Flammability Control System)

今は、電源が無いのでFCSが運転できません。
したがって、窒素ガスを入れて不活性化しようとしているのだと思います。


下記URLに、電気事業連合会が出した
「可燃性ガス濃度制御に関する規制の経緯と設計(BWR)」
とタイトルの付いた資料があります。

http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/kakunou/1/siryo1-2-1.pdf

8ページ目に、可燃性ガス発生のメカニズムについて、次の様に記載されています。

LOCA時に可燃性ガス(水素・酸素)が発生


FCSを、あとから付けたプラントでは、しっくりこない場所に付いているのが多いです。
返信する

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