弁理士の日々

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百田尚樹著「永遠の0」

2013-09-24 00:29:03 | 趣味・読書
永遠の0 (講談社文庫)
百田尚樹
講談社

職場の同僚から借りた上記の本を読み終わりました。
まだ読み終わる前、この小説のヒントになったのではないかと感じた古い書籍があったので、「ワレ本日二機撃墜」としてすでに記事も書いています。
読了後、「永遠の0」の巻末に「主要参考文献」のリストが掲示されていることに気づきました。この文献目録のなかには、「ワレ本日二機撃墜」が掲載されている、豊田穣著『撃墜』―日米空戦記 (光人社NF文庫)はあがっていませんでしたね。残念ながら私の推測は外れたのでしょうか。

私も太平洋戦争中における零戦の物語についてはいろいろと読んできました。柳田邦男著「零戦燃ゆ〈1〉 (文春文庫)」、岩井勉著「空母零戦隊 (文春文庫)」については、「永遠の0」「主要参考文献」にも掲載されていました。
これら私が過去に読んできた文献からの記憶と、「永遠の0」の記載とを比較してみると、少なくとも戦場で起きている事象については非常に正確に再現されていると理解できました。登場人物の内面については、当時の当事者と同じ心理風景であったか否かは当然ながら推測できませんが。
たまたまネット検索で見つけた、粕井貫次さんの書き下ろし個人エッセイ『「永遠の0」百田尚樹著を読んで』において、
ご本人の戦争体験については、
『私は13期海軍飛行専修予備学生で昭和18年 9月に入隊、93式水上中間練習機、零式三座水上偵察機、九四式水上偵察機の操縦を学び、九三式中間練習機の教官をへて特攻編成、出撃30分待機をへ て終戦を迎えました。搭乗時間550時間、元海軍中尉。』
と紹介されています。
そして、「永遠の0」に関して、
『戦後しか知らない著者の記述には時おり間違い勘違いなどが多いものですが、この小説には全くといってよいほど、それがありませんでした。』
と評されています。実際に体験された方の評価ですので、そのとおりなのだと思います。

この小説の構成は、現代に生きる二人の姉弟が、太平洋戦争末期に特攻で戦死した実の祖父の足跡を知ろうとして、祖父の当時を知る存命の方々を訪ね歩くストーリーとなっています。それら存命の方々が語る戦争の実録は、太平洋戦争について予備知識が何もない人にとっても、太平洋航空戦史をそのまま実感することができます。
神風特別攻撃隊は、形の上では志願したことになっていますが実態は強制でした。このような形で死んでいく特攻隊員の心の中を、現代の我々が推し量ることはとても困難です。この小説は、現代の若者の目を通して特攻の実録を見る形をとることによって、あの時代を生き、そして特攻で死んでいった若者たちを現代の我々に身近なものとしてくれているようです。大手新聞の高山記者を登場させることによって、いろいろな考え方を対比させることにもなっています。

また、太平洋戦争、および太平洋航空戦史に関し、後世に伝えておきたいエッセンスの多くの部分がこの小説の中にコンデンスされていると感じました。
例えば私は、「日本が太平洋戦争まで突き進んでしまった根源は、日露戦争のポーツマス講和条約後の日比谷焼き討ち事件にさかのぼるのではないか」との印象を持っているのですが、この本でも同じことが語られていました。
さらに、私が『堀越二郎著「零戦」角川文庫』で書いた“零戦と太平洋戦争の全体感”についても、この小説では私と同じ全体感を共有し、さらにその根拠についても過不足なく述べられていました。

ところで、「永遠の0」巻末参考文献の中に「戦艦ミズーリに突入した零戦」との書籍が掲載されていました。
戦艦ミズーリに神風特攻で突入した零戦については、下の有名な写真があります。
 NavSource

私は、5年前のハワイ旅行で真珠湾に公開されている戦艦ミズーリを訪問しました(戦艦ミズーリ訪問)。
ミズーリの後甲板には、カミカゼ突入についての説明パネルが設けられていました。

戦艦ミズーリ甲板上に掲示された説明パネル
『1945年4月11日、連合軍による沖縄侵攻のとき、米戦艦ミズーリは日本のゼロの攻撃を受けた。火はすぐに消し止められた。・・・・カミカゼの飛行機の残骸の中から、イシノセツオの遺体が回収された。キャラハン艦長は、翌日に軍の葬儀(水葬のこと?)を行うように命じた。』
右上方にはイシノセツオとキャラハン艦長の写真が掲示されています。
下の4枚の写真、左から1番目の写真は、車輪が見えることから主翼の一方でしょう。2番目の写真、高射機関砲の先端に残骸が引っかかっています。3番目の写真は水葬の際の“弔銃”といわれる作法でしょう。右端は水葬される様子です。

戦艦ミズーリにおけるカミカゼ突入と「永遠の0」との関係について記述すると、ネタバレになりますのでやめておきます。
コメント (1)
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