弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

政府のおろおろぶりはなぜ?

2011-05-17 21:26:45 | サイエンス・パソコン
5月12日に、1号機の圧力容器水位計を調整した結果として、それまでは燃料棒上端から1.65m程度下方にあると思われていた水位が、燃料棒上部より約5m低いことがわかりました。新たに分かったことはこれだけです。しかしその結果として、「水棺とする計画はおじゃんになった」という結論まで導かれました。

水位が燃料棒上部-1.6mだろうが上部-5mだろうが、燃料棒が露出していることでは変わらず、露出している部分がメルトダウンしていることにも変わりありません。何で天と地ほどの差が生じるのでしょうか。

今まで、1号機の格納容器は健全で水が半分ぐらいまで溜まっているといっていたのが、突然格納容器が破損して水棺は不可能であるという話にかわりました。しかし、格納容器が健全で水が溜まっていると判断していた従来の根拠も不明ですし、突然格納容器が破損していることに変化した根拠も不明です。
そもそも、圧力計を見る限り、格納容器内の圧力と圧力抑制室の圧力とが同じままで推移しているのですから、「水は溜まっていなかった」と見る方が自然なのにです。

どの計器が信頼できるかがあいまいなのですから、「格納容器内に水は溜まっているかもしれないが溜まっていないかもしれない。格納容器は健全かもしれないが破損しているかもしれない」というスタンスであらゆる計画は立案すべきです。それなのに、「少なくとも1号機は水棺でいける」と決め打ちし、それだけを実行すべく推進してきたのですね。
呆れてものも言えません。
政府・東電統合対策室事務局長の細野豪志首相補佐官は、メルトダウンを「想定していなかった」と述べているようですが、一方で原子力安全委員長の斑目春樹氏は以前からメルトダウンを予想していたと発言しています。政府は、極めて情報不足の中で起きている事象を推測するに当たり、東電からの極めて楽観的な推測は信じていたが、政府に助言する権能を有している原子力安全委員会の委員長からの意見にはまったく耳を貸さなかったということでしょうか。

私は、循環冷却にして圧力容器への水注入量を増大することが大事なのはわかりますが、水棺にするか否かが大事かどうかわかりません。とにかく、取水位置を決めた上で、循環冷却に早く移行することを優先すべきでしょう。私は3月29日の圧力容器の冷却方法以降このことを言い続けているのですが、なぜ素人の私がこんなことを言い続けなければならないのでしょうか。

ところで、原子炉建屋などに溜まった汚染水を取水して循環するに際しては、「放射能除染しなければならない」と報道されています。水棺のときだって、格納容器に溜まる水は圧力容器から来た水ですから汚染されているのですが、格納容器内の水を取水して循環冷却するに際し除染する必要があるとの報道はありませんでした。なぜ急に除染の話が出てくるのでしょうか。必要だというのなら、もう1ヶ月以上も前から除染のための設備が計画されているべきです。

《3月11日の1号機》
朝日新聞5月16日の記事によると、1号機圧力容器の水位は、津波来襲と同時に下がり始め、11日18時頃から12日20時に海水注入が始まるまで(それ以降も)、燃料棒がすべて露出しています。しかし、今までも11日の1号機圧力容器水位は公表されており、12日20時の海水注入開始時の水位は燃料棒の上端付近まではあったことになっています。水位計がこのときすでに狂っていたということでしょうか。そのために、1号機の燃料棒が11日の時点で完全に露出していたことが今までわからなかったのですね。
一方2号機については、14日の夜から翌未明にかけて燃料棒が全部露出していたことがそのときからわかっています。今ごろになって「はじめてメルトダウンと聞かされた」とびっくりすることはないでしょう。1号機についても、3月23日に圧力容器温度が400℃であることがわかってあわてふためいたのですから、今になってメルトダウンと聞いても驚くことではありません。

ところで、地震発生から津波到来までの間、1号機で「非常用復水器」を手動で止めたため、津波来襲以降に早期にメルトダウンしてしまった、というような報道があります。この意味がよくわかりません。
2、3号機は、津波来襲ですべての電気機器がダウンした後も、圧力容器から放出される蒸気の力でポンプを回して冷却する「隔離時冷却系」が作動し、そのために「冷却不能」に至る時期が13~14日まで延びました。1号機について見ると、今回の報告では、津波来襲直後から圧力容器水位が下がり始めており、1号機の隔離時冷却系は作動しなかったようです。
ところで、地震発生から津波来襲までの間は、ディーゼル発電機が健全だったので、電気機器が作動しており、圧力容器の冷却は隔離時冷却系ではなく残留熱除去系にて行っていたはずです。圧力容器や圧力抑制室内の水を取水し、海水で冷却し、圧力容器に戻す系列です。
「非常用復水器」が私の持っている図面中には出てこないのでわからないのですが、津波到来前に作動していたということは残留熱除去系などで使われていたのではないかと推測されます。そうとしたら、津波来襲後に隔離時冷却系が動き出すにあたって、非常用復水器は関係ないようにも思われるのですが、どうなっているのでしょうか。
コメント (3)
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