弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

1号機の計測器を調整してみたら

2011-05-12 20:46:10 | サイエンス・パソコン
1号機の原子炉建屋内に作業員が入り、本日は計測器関係の調整結果が発表されました。その結果、『圧力容器内の水位計を点検、調整した結果、水位は燃料棒(長さ4メートル)の上部より約5メートル低かったと発表した。東電や経済産業省原子力安全・保安院によると、燃料の大半が溶融して圧力容器の底にたまっているとみられる。東電は、圧力容器の温度は120度以下に保たれており、炉心は引き続き冷却されているとみているが、枝野幸男官房長官は「原子炉の状態について再度調査する必要がある」と述べた。
東電によると、調整前は燃料棒上部から1.65メートル前後低い水位を示していた。』
ということで、大騒ぎになっています。

現時点で、圧力容器の水位計以外については調整後の状況が聞けません。圧力容器の圧力計、格納容器と圧力抑制室の圧力計についてはどうなのでしょうか。また、圧力容器の温度計についても知りたいです。

そもそも、私が4月29日にGWに突入&原発の状況
『1号機の圧力容器圧力は現在でも4気圧G程度と高い圧力です。圧力容器に注入した冷却水が漏れているにしても、漏れ箇所では圧力差3気圧程度に抗して水を押し出しているわけで、冷却水注入量を6トン/時から10トン/時に増やしたら、少しは圧力容器内の水位が上昇してもいいと思うのですが、上昇しないようですね。』
と書いたように、水位計の精度は疑われていました。ですから驚くには当たりません。

また、「水位が時間に依らず一定」ということで、毎時6トンの水を注入し、それと同じ量の水が(一部は蒸気として)圧力容器から排出されているわけで、「圧力容器から漏れる水の量」については今回の水位計の調整前後で何も変わりません。「漏れてる、漏れてる」と大騒ぎすることでもないでしょう。

圧力容器の圧力が4気圧G、格納容器の圧力が1気圧absということで、圧力差があります。この圧力差から、私は「圧力容器そのものは小さな穴はあるとしても大穴は開いていないだろう。水漏れは、配管から起きているに違いない」と考えていました。
ところで、圧力容器の圧力4気圧Gも怪しいのでしょうか。よくよく原子力技術協会のグラフを見ると、1号機の圧力容器圧力(A)変動と格納容器圧力変動のグラフは、微細部でよく似ていますね。ひょっとすると、圧力容器圧力(A)は長時間変動のバイアスを有し、そのバイアスが現時点で+4気圧であって、実際には圧力容器と格納容器の圧力は一致しているのかも知れません。何しろ圧力容器圧力(B)のバイアス時間変動が激しいですからね。

ところで、一部の報道では、「1号機の格納容器内についても、すでに半分ぐらい水が溜まっていると考えられていたが、実はほとんど水が溜まっていないらしい」と報じられていました。
もしこれが本当だとしても、私は驚きません。4月21日に海に流出した放射能量、格納容器の溜まり水
『しかし、格納容器内に水が溜まったら、その水圧で、格納容器のドライ部分の圧力に対して圧力抑制室の圧力は高くなるはずです。水の高さが5mだったら圧力差は0.5気圧(0.05MPa)になります。
ところが、経産省のプラント関連パラメータの2ページ目によると、1号機の格納容器圧力は、D/W(格納容器内)もS/C(圧力抑制室)もともに160kPa(0.16MPa)で同じであり、水圧が立っているようには見えません。それとも、この圧力測定値のどちらか又は両方とも、正確ではない、ということでしょうか。
むしろ、3号機の方が、D/W=106kPa、S/C=176.8kPaということで、格納容器内に水深7mの水が溜まっているように見受けられます。』
と書いたように、「1号機格納容器には水が溜まっていない」を示唆するデータが出ていたのですから。

これについても、今回の計測器調整で格納容器と圧力抑制室の圧力計調整結果が出ればすぐに決着が付くでしょう。

もしも、圧力計の調整結果として「1号機の格納容器は密閉性が保たれている」という結論が出るのであれば、たとえ圧力容器はざざ漏れだとしても、「格納容器を水棺として、燃料棒の位置まで水で満たす」という従来の方針を変更する必要はない、ということになります。
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