弁理士の日々

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長谷川幸洋氏と経産省とのバトルがすごいことに

2011-05-23 00:01:09 | 歴史・社会
長谷川幸洋氏は著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア――本当の権力者は誰か (現代プレミアブック)』において、日本のジャーナリズムがどのようなメカニズムで霞が関に籠絡されているのかを詳細に論じた人です。私が長谷川幸洋「日本国の正体」で書いたとおりです。

その長谷川幸洋氏(東京新聞・中日新聞論説副主幹)と、経済産業省との間のバトルがすごいことになってきました。

発端は、現代ビジネスにおける長谷川幸洋氏の『「銀行は東電の債権放棄を」枝野発言に資源エネ庁長官が「オフレコ」で漏らした国民より銀行、株主という本音~「私たちの苦労はなんだったのか」とポロリ』における発言です。
長谷川氏は5月13日午後、資源エネルギー庁が開いた論説委員懇談会に出席しました。そこで「枝野発言をどう受け止めるか」という質問に対して、細野哲弘長官は「これはオフレコですが」と前置きして、「そのような官房長官発言があったことは報道で知っているが、はっきり言って『いまさら、そんなことを言うなら、これまでの私たちの苦労はいったい、なんだったのか。なんのためにこれを作ったのか』という気分ですね」と発言した内容を記述しているのです。
そして、論説懇で「オフレコですが」と前置きしての細野発言が何を狙ったものなのか、それを解説しました。さらに、
『最後に「オフレコ話を書いて大丈夫か」という読者に一言。官僚はよく自分の都合に合わせて「これはオフレコ」などというが、私は私自身が明示的に同意した場合を除いて、そういう条件は一切、無視することにしている。
今回は細野が勝手にそう言っただけで、私はなにも同意していないし、同意を求められてもいない。したがって、今回はオフレコでもなんでもない。相手が勝手にそう思い込んだだけの話である。』
と念を押しました。

その続報が同じ長谷川氏による『本人に直接言わず、上司に電話「オフレコ破り」と抗議してきた経産省の姑息な「脅しの手口」~「枝野批判」の情報操作がすっぱ抜かれ大あわて』です。
経済産業省の成田達治大臣官房広報室長が、上記現代ビジネスでの長谷川氏の論説に対し、反応を示しました。成田室長が電話してきたのです。
『成田は私に直接、電話してきたのではない。私の「上司」に電話したのだ。』
そこで長谷川氏はすぐに成田氏に電話しました。
長谷川氏と成田室長との電話内容は上記の記事を見てください。
成田室長は、長谷川氏本人に電話するのではなく、上司に電話し、「オフレコですが」と断ってした細野長官発言を記事にしたことについて抗議してきたのです。
長谷川氏は、その成田室長との電話内容をも上記のように記事にした上で、官僚の「オフレコ発言」というのは官僚側のどのような意図によってなされるのか、記者側はなぜ、その官僚側の意向に沿ってしまうのか、というてんについて解説されています。
その上で、『だから、官僚が「ここはオフレコで」といったときこそ、本当は記者が官僚の狙いに気づかなければいけない。』としています。

そして、『では、論説懇のオフレコ破りは許されるのか。
私は基本的に大勢の記者が参加した場で「オフレコ」はあり得ない、と思っている。』
として、その根拠を述べています。

このような事態になって、経産省が煮えくりかえっているだろうことは推測できます。そしてその波紋は、さらにすごいことになって噴出したのでした。
長谷川氏の第三報『「枝野批判」オフレコ発言をすっぱ抜かれ、今度は東京新聞記者を「出入り禁止」にした経産省の「醜態」~広報室長は直撃にひたすら沈黙』です。
なんと、『東京新聞の経産省クラブ詰め記者に対して、事務次官など幹部との懇談に出席するのを禁止したのだ。いわゆる懇談への「出入り禁止処分」である。』という強硬手段に出たというのです。
『当事者である私自身に対しては、これを書いている19日午後7時現在に至るまで、経産省はいっさい接触しようとしてこない。私との接触を避ける一方、先のコラムで紹介したように「上司」に抗議電話をかけ、それでも効き目がないとみるや、今度は取材現場で働く記者に懇談出席禁止の制裁を加えたのである。』
この事態に対応し、長谷川氏は19日午後、経産省の成田広報室長をアポなしで訪問しました。
当初は取材に応じた成田室長は面談を切り上げようとします。
『「私は私の記事の件で経産省が弊社の記者に幹部との懇談を遠慮するように求めたと理解しているが・・・」
「知らない」
「え、知らないんですか?」。これには驚いた。』
『記者への懇談禁止処分について、私はそれなりに事実関係を確認している。だが、成田は認めないばかりか「知らない」と言った。クラブ記者の懇談禁止処分について、成田が「知らない」というのが本当なら、広報室長の職責を果たしているとは言えない。広報失格である。
もしも懇談禁止処分が本当であるとしたら、とんでもないことだ。』
さらに長谷川氏は、新聞社内における論説委員と新聞記者との関係を述べ、両者が新聞社内で独立の地位を保っていること、霞が関も当然にそのような関係を知っていると述べています。
霞が関は、論説委員といえども新聞社に所属するサラリーマンであるから、サラリーマンの弱みに付け込むべく、まずは「上司」に圧力をかけ、それでもだめなので「同じ社内の新聞記者」に圧力をかけてきたのです。

いかに東京新聞が度量のある新聞社であったとしても、霞が関からこのように露骨な圧力をかけられたら、会社としては腰砕けにならないとも限りません。そうなれば雇われ人である長谷川論説主幹の命運にも影響は及ぶでしょう。
大変なことになってきました。
長谷川氏は
『フリーランス・ジャーナリストたちの努力には頭が下がる。組織メディアの一員として、せめて戦うチャンスが来たときくらいは精一杯、戦っていきたい。』
と決意を述べて記事を締めくくっています。

これからどんなことになるのか。目が離せなくなってきました。
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