弁理士の日々

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5月23日東電報告書(1)

2011-05-29 17:52:39 | サイエンス・パソコン
東電は5月23日、福島第一原子力発電所の地震発生時におけるプラントデータ等を踏まえた対応に関する報告書を公表しました。公表のいきさつについては、プレスリリース「当社福島第一原子力発電所の地震発生時におけるプラントデータ等を踏まえた対応に関する報告書の経済産業省原子力安全・保安院への提出について」に記されています。
そしてそのプレスリリースには、以下の3種類の添付資料が添付されています。
東北地方太平洋沖地震発生当時の福島第一原子力発電所運転記録及び事故記録の分析と影響評価について(概要)
東京電力 福島第一原子力発電所2号機、3号機の炉心状態について
東北地方太平洋沖地震発生当時の福島第一原子力発電所運転記録及び事故記録の分析と影響評価について

3番目の資料は、225ページに及ぶ膨大な資料です。私はこれをプリントアウトし、記載内容について読解努力をしてみました。
内容は大きく3部構成になっています。「1.はじめに」のあと、2.から8.までにおいては、最近になって現地の中操(中央操作室?)から回収されたチャート類、日誌類に的を絞って、それら新たなデータから何が分かったか、という点のみを記述しているようです。
次の「別紙-1」は「福島第一原子力発電所1~3号機の炉心の状況ついて」との標題で、いくつかの仮定を置いて炉の挙動をシミュレーション(解析)し、シミュレーションの結果と得られている計測結果を対比し、どのような仮定を置けば計測結果と一致するのか、という観点での分析が行われています。この「別紙-1」で参照されている計測結果は、最近になってはじめて明かされたデータはほとんどなく、大部分は当初から判明していた計測データでした。
最後の「別紙-3 福島第一原子力発電所 設備の損傷状況と原因について」は、損傷状況が一覧表にまとめられたものです。

《シミュレーションにおける海水注入量の前提(2、3号機)》
1号機において、圧力容器の水位計を最近になって較正したところ、それ以前には水位が燃料棒上端から1.6m下方にあるものと表示していたものが、較正の結果5m以上下方であると修正されました。2、3号機についてはまだ水位計の較正がなされていません。いずれも、燃料棒上端から1.5m前後下方に水位があることになっています。
2、3号機の解析では、前提条件として、
【その1】消防ポンプによる海水注入の注入量は、水位計が示す水位が維持できる程度の注入量を確保していた。
【その2】消防ポンプによる海水注入の注入量は、燃料域以下程度の水位が維持できる程度の注入量しか注入されていなかった。
という2種類の仮定をおき、それぞれについて解析がなされています。

《炉心溶融について》
2、3号機について上記のように2種類の解析を行っているのですが、「炉心溶融の有無」という点に関しては、“水位計が示す水位を維持できる海水注入量であったとしても、炉心溶融は起こっていた”という結論です。水面より上方に位置していた燃料棒が溶け落ちたということで、言われなくても当たり前の結論だと私は思います。
そして当然、水位が燃料域以下までした到達していなかったという前提では、燃料棒のすべてが溶け落ちたという結論です。
1号機に関する今までの報道で、水位計の較正がなされた後にはじめて、「1号機で炉心溶融が起きていた」ことが表明されたわけですが、結局、較正前の水位計の水位が正しかったとしても炉心溶融は起こっていたと言うことです。「新しい事実が判明したから判断を変更した」のではなく、「従来から分かっていたデータに基づく判断を修正した」ということで、「今までしらを切っていたがとうとう白状した」というに等しいでしょう。

《圧力容器の破損について》
号機毎に、シミュレーションの結果として「圧力容器は地震発生後○○時間で破損した」という結論を述べています。どうも、「圧力容器内の状況が□□になると圧力容器破損に至る」という評価をしているらしいのですが、肝腎の□□については何ら述べていません。
そして、号機毎に以下のような判定を行っています。
・1号機:地震発生から約15時間後に圧力容器破損に至る。 → 3月12日に海水注入を開始する前に、すでに圧力容器は破損していたということです。
・2、3号機:【その1】前提(燃料棒上部から1.5m程度に水位が維持される程度に海水が注入されていた)では、現在に至るまで圧力容器は破損していない。
【その2】前提(燃料棒下端までしか水位が維持されない程度の海水しか注入されていなかった)では、2号機で地震発生後約109時間、3号機で地震発生後約66時間に、圧力容器が破損した。
「圧力容器の破損」というのが、どの程度の破損であるのかについては何ら述べられていません。

それでは、号機ごとの報告書読取り結果については別の記事とします。

1号機  2号機(1)   2号機(2)
コメント (1)
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