弁理士の日々

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立ち直った!はやぶさ

2009-11-23 17:24:12 | サイエンス・パソコン
11月12日「はやぶさ! がんばれ!!で報告したように、小惑星「イトカワ」の探査を終えた惑星間探査機「はやぶさ」は、イオンエンジン不調で大きな危機に見舞われていました。
はやぶさの4基のイオンエンジン(スラスタA~D)の全部が不調になり、エンジンが停止していたのです(小惑星探査機「はやぶさ」のイオンエンジン異常について)。
・スラスタA:打上げ直後に動作不安定等があったため、運用を休止中。
・スラスタB:中和器の劣化による電圧上昇があり、運用を休止中。(2007年4月以降)
・スラスタC,D:それぞれ中和器の劣化による電圧上昇の傾向が生じている。

提供 JAXA

それが11月19日の報告「小惑星探査機「はやぶさ」の帰還運用の再開について」において、無事に解決の方向に向かっていることが示されました。
この報告によると、はやぶさのイオンエンジンは、イオンビームを噴射するイオン源と、電子を噴射する中和器がセットになっています。中和器が不調になると、イオン源が正常であってもそのスラスタは運転不能になるようです。
そして今回の修復は、中和器が健全であるスラスタAの中和器と、イオン源が健全であるスラスタBのイオン源とを結合し、1台のイオンエンジンとして稼働再開が可能になったというのです。

        提供 JAXA

地上であれば、中和器Aとイオン源Bとを電気的に結合する回路を増設する改造は、いとも簡単にできるでしょう。しかし現在、はやぶさは宇宙空間に浮かんでいます。このような状況で中和器Aとイオン源Bとを結合することができたということは、打ち上げ前の設計・製造段階で、このような結合を可能にするスイッチ類がちゃんと装備されていたことを意味します。

つまりこれは、あらゆる不具合を想定したうえで設計段階で準備した回路が、はやぶさの命を救ったことを意味します。

はやぶさは、今までに数々の不死鳥伝説を生み出してきましたが、そのいずれも、設計段階での配慮、そして運用段階での智恵が生み出したものであり、はやぶさを設計・運用するエンジニア・研究者たちのレベルの高さを示すものでしょう。

はやぶさの地球帰還を願って。
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