弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

ガソリン暫定税率の行方

2008-01-18 22:22:26 | 歴史・社会
ガソリン税の暫定税率を廃止するか否かが国会で大議論になっているようです。

道路特定財源はガソリンにかかる揮発油税・地方道路税など6種類あり、年間の税収は国分が3.3兆円、地方分は2.1兆円といいます。このうち5種類では、本来の税率に上乗せした暫定税率の期限が3月末と4月末に迫っており、すべて切れると、国分で1.7兆円、地方分で0.9兆円の税収が消えます。

民主党は暫定税率を延長しないと主張し、自民党は延長すべきとしています。地方自治体は、暫定税率がなくなっただけで代わりの収入がなければ、直ちに自治体の台所を直撃しますから、悲鳴を上げています。
一体どうすべきなのでしょうか。


1年以上前でしたでしょうか、「道路特定財源の一般財源化は是か非か」という議論がありました。「道路特定財源は余っており、その全額で道路を造り続けると無駄な道路が増えるばかりだ。余った分は一般財源化すべきだ。」という議論だったと思います。

私は当時、道路特定財源が余っているのであれば、一般財源化するのではなく、ガソリン税を下げるべきだ、と考えていました。ガソリン税というのは、ガソリンを使う、つまり道路を使う人が、道路建設費を負担すべきだ、という考え方であり、あくまで受益者負担です。ガソリンを使う人のみから徴収した税金を、ガソリンを使わない人も含めた用途に用いるのはおかしいです。受益者負担で考えたら、一般財源は一般税で賄うべきであり、道路特定財源が余っているのならガソリン税を減税すべきです。

ところが、ガソリン税を下げるべき、という声は大きくありませんでした。
ガソリン使用者は、長年にわたって高い税率に馴れてきたので、そのような税金を払っても事業が成り立つような事業構造になっているのでしょう。
結局当時は、「受益者負担原則で税を徴収」するのではなく、「取りやすいところ(文句をいわないところ)から取る」という姿になっていました。

それが最近の原油価格高騰です。
音を上げたガソリン使用者は、今こそ「ガソリン税を下げてくれ」と悲鳴を上げ始めたでしょう。そして、まさに絶妙のタイミングで暫定税率の期限が到来したのでした。

「暫定税率を延長すべきか否か」という今回の議論については、「その税金で何をやるのか、その税金は誰から徴収すべきか」という原則に則って考えるべきと思います。

もし、「造るべき道路はまだ多い。暫定税率を延長してやっと財源が確保できる程度だ。」ということであれば、その財源はガソリン使用者に負担してもらいましょう。暫定税率延長です。
一方、「足りないのは道路ではなく、それ以外の一般財源だ。」ということであれば、その財源は国民が等しく負担すべきです。ガソリン使用者のみに負担させるべきではありません。暫定税率は延長せず、必要な財源は別に確保すべきです。

「別に確保」といって、どこから確保するのか。やはり有るべき姿は消費税の増税でしょうね。
「そんなのすぐにはできっこない。今年の4月から足りなくなる分をどうするのだ」という心配があるでしょう。
いやいやご心配なく。去年の暮れ、財務省で10兆円の埋蔵金が見つかったことを思い出しましょう。暫定税率の非延長で足りなくなる財源は、1年程度であればこの埋蔵金で食いつなげます。埋蔵金は国債償還に充てるでしょうが、その分国債発行額が増えるのは我慢しましょう。これら財源を用いて、当面の地方自治体の悲鳴に答え、その一方で歳出削減や消費税アップの議論を進めていかなければなりません。

ところで、「暫定税率を維持し、得られる道路特定財源のすべてを使って道路を造り続けるべきだ」ということはあるのでしょうか。
一時は「道路特定財源の一般財源化」とまでいわれたのにどうしたことでしょう。
去年の参議院選挙の結果から、「地方の疲弊」がクローズアップされました。地方を疲弊から救うには、必要ない道路を造ることで地方に金を落とすしか方策がない、ということだとしたら、ずいぶんと時代が逆行したものだとあきれてしまいます。
コメント
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