<282> 大和に見るツツジ科の仲間たち (2)
尾根に立つ
大声を出して
呼んでみたくなる
白い雲が浮かんで
つつじが咲いて
風がいざなう
今回はドウダンツツジ属の仲間たち、シロドウダン(チチブドウダン)、ベニドウダン、サラサドウダン、カイナンサラサドウダン、それにコアブラツツジを採りあげたいと思う。白いドウダンツツジは金剛山の登山口に当たる御所市の高天彦神社の参道などに見られるが、これは植栽で珍しくない。大和に自生するものは十津川村の果無峠付近の一箇所に見られる程度のようであるが、植栽起源とも考えられる。私は一度見てみたいと思って足を運んだが、出会うことが出来ず、まだ見ていない。
ドウダンツツジ属の仲間たちは紀伊山地の山岳に多く見られ、花の時期に当たる六、七月ごろ登れば、どの花かに出会える。カイナンサラサドウダンは紀伊半島の南部に多いようであるが、私は天川村北角の布引谷の林縁で見かけた。今回紹介するツツジ科の仲間たちは大和北部では見かけないものばかりで、言わば、珍しい花の部類に入る。アブラツツジは大和より北に分布し、大和は変種のコアブラツツジが分布域で、この花が見受けられる。
このように植生の分布は不思議であるが、これは、私たちの理解が及ばないだけで、自然の妙味が現われているということであろう。一つの例で言えば、ツクシシャクナゲの分布に言われる襲速紀要素の植物がある。「襲速紀」とは熊襲(南九州)、速水瀬戸(豊後水道)、紀州(紀伊半島)の略で、紀伊半島、四国、九州(特に南部)に分布する植物種群に当てて言う言葉である。
この植物種群は二つの海峡を隔てて分布するわけで、この自然的不思議を解くキーワードとしてあるのがこの「襲速紀」なる言葉である。即ち、この植物種群は日本列島の形成期のまだ本州、四国、九州が分離していなかったころ、その一帯に分布していたと見られる植物種群で、太古の時代から今に継いでいる存在の植生である。で、それがツクシシャクナゲにも当てはまるというわけである。
こういう論理から考えてみると、紀伊山地より南には分布しない北方型のホンシャクナゲにも自然上の理屈がつくはずであるが、そこははっきりしない。このように、植生には未解明なところが多く、分布にも言えることで、はっきりと断定出来ない面がある。最近、大和に自生するツクシシャクナゲの群落をホンシャクナゲの群落ではないかとする疑義が出されているなどもこの事情を物語る。
写真は左からサラサドウダン(山上ヶ岳)、シロドウダン(弥山登山道の大峯奥駈道)、ベニドウダン(釈迦ヶ岳山頂)、カイナンサラサドウダン(天川村の布引谷)、コアブラツツジ(大台ヶ原の大蛇付近)。
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