大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年02月10日 | 創作

<2953> 作歌ノート 感と知の来歴  自覚の一基

    自負の塔自覚の一基はるかなれ視野の中なる意思として歌

 「自負に寄らずば」と心底にはあるものながら覚束なくも歩んでいるのが生の現実であり、覚束ないは覚束ないままに、その生の自覚をもって歩んでいるとは言える。その生の身を一基と見る。即ち「自覚の一基」がここに存在し、イコール「自負の塔」とも見ることが出来る。言わば、これは我が短歌の要諦に属すると言ってよかろうか。以下の歌は必然のごとくに生まれ出たというべきであろう。 写真はイメージで、塔。

                           

  未だなほ叶へられぬがゆゑ夢の存在あるはジョバンニの夢

  千羽鶴千を束ねて千の意思、千の意思には千の悲祈願

  早々と店を閉めゐる冬の街心冴えつつあるは歌人                 歌人(うたびと)

  豊穰を言はば豊葦原の国さやさやと波立ちゐる穂群              穂群(ほむら)

  喉にて弑せし言葉呑み込めば再び燃ゆる心底の核               喉(のみど)

  志たとへば夢の太陽領はためく旗の在処青空                     志(こころざし)

  よしそれもよしそのことも若さ若さあるは無駄口たとへば浪費

  夏病に思ふ投げ上げたる帽子眩しさは胸に帰り来ざるか

  尊厳は誰の胸にも 命たる我の我等の我等のほかの

  知悉してみなことごとく去らしめる時の非情に身を置く定め

  人の世の輻輳したる関はりに或るは犠牲となりしものあり

  死は生の涙ぐましき関はりの果て立ち枯れの向日葵の花

  空に出で空に帰するといふ思想この世はいはば切なさにある          空(くふ)

  我らみなビル住空間未来派か未来に何を夢見てゐるか

  奢りもて立ちたる汝地続きに罅割れてゆく予感はなきか

  一方の側からのみの眼には一方の側のみしか見えぬ

  忍ぶとは恋を言ひやる言葉なり忍べば募る理にあり                   理(ことはり)

  濃き霧は晴るる証と昔よりここに舟人待ちつつぞある

  人一人そしてすべてに意思こころそしてこの世の水脈(みを)の輝き 

  行くものも行かざるものも惑へるも岸辺はつまり思ひの岸辺

  鼓動あるこの身に重ね思はしむはためき尽きぬ旗のその鳴り

  瞑目のうちに生まれし歌の数尽きざるものは思ひなりけり

  猫の死と我が瞑目の歌とありそしてあるなり秋の夕暮

  二千首に及びしことも不束に来し身この身の証なりけり

  「青い鳥」実は汝の胸の中 近くて遠き存在にあり

  記すべき何かをわれらは知ってゐる塔に冬日が射してゐるなり

  波頭輝きとして見ゆるゆゑ眼差し熱く断崖に立つ                          断崖(きりぎし)

  顧みてあなたに涙あることの感傷もまたよけれ旅路は

  塔一基歴史を負ひて立ち続け常に時代の眼差しの中


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