<1893> 余聞・余話 「啓蟄十景」
啓蟄や団子虫出づ庭の隅
五日は二十四節気の啓蟄の日。いよいよ冬眠の虫が長い眠りから覚めて這い出して来る本格的な春の訪れを告げる日である。我が家の庭の隅では蕗の薹が顔を見せ始め、団子虫も這い出すのが見られた。昼過ぎまで天気がよく、穏やかに晴れ、気温も上昇して春への足取りも歩を一歩進めたというところ。今日は最近の印象事項による「啓蟄十景」をノルマに句作を試みた。では、以下十句。 写真はカットで、羽ばたきを見せるカモ(左)と庭隅に顔を出した蕗の薹(右)。
蕗の薹今年も見えて一二三
のんびりと綿雲浮かべ春の塔
旅立ちの時を迎へし鴨の群
一輪の花一輪の春の色
梅林を廻りて花に温まる
雪洞の灯りゆかしきひな祭り
建て売りの幟はためく弥生かな
幾度の春か人生遠く来ぬ
花あれば人々集ひにぎはへる
時を得て花芽すくすく奈良大和