yoshのブログ

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出郷(しゅっきょう)の作    佐野竹之助

2019-06-27 06:25:23 | 文学
幕末の志士、佐野竹之助(さの たけのすけ)の七言絶句を紹介します。

出郷の作

決然去國向天涯
生別又兼死別時
弟妹不知阿兄志
慇懃牽袖問帰期

 出郷ノ作
決然國ヲ去ツテ天涯ニ向カフ
生別又兼ヌ 死別ノ時
弟妹(ていまい)ハ知ラズ 阿兄(あけい)ノ志
慇懃袖ヲ牽(ひ)イテ 帰期ヲ問フ

「訳」

(国家百年の計を誤る姦賊井伊大老の暗殺を決行しようと、)断固心を決して水戸の国を立ち去り、遠い天の果ての江戸に向かう。(このたびの企ては成功しても万が一にも生還は期しがたい。)今日、家族の者と生きながら別れるが、これがまた死に別れを兼ね、今生の暇乞いとなるのである。幼い弟や妹は、それとも知らず、ねんごろに袖を引っ張り、「お兄さん、お帰りはいつですか」という。(この兄がいつものように帰ってくるものと思い、帰国の時期をたずねるのもいじらしく、これを思うと腸もちぎれるばかりである)


「鑑賞」

佐野竹之助は水戸藩士、徳川斉昭の家来。死を賭して大老暗殺の大事を決行せんとして、脱藩して郷里水戸を去る折、何事も知らない幼い弟妹に袖を引かれいつごろ帰るかを問われたときの断腸の思いを詠じました。竹之助は襲撃の時に受けた刀傷のため、その夜、21歳にて死没しました。享年21歳。詩は平易に詠じられていますが、転句と結句が秀逸に思われます。


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