yoshのブログ

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無題  阿倍仲麻呂

2019-10-23 07:07:02 | 文学
阿倍仲麻呂(701~770)は奈良時代の遣唐留学生です。幼少のときから聡明で読書を好みました。716年、16歳で吉備真備らと共に選ばれて遣唐留学生となり唐に渡り、進士に及第し、やがて唐王朝に仕えました。王維や李白と親交を結び、大いに活躍しましたが、日本に帰ることは出来ませんでした。ここでは、仲麻呂の五言絶句を紹介します。

 無題

慕義名空在
輸忠孝不全
報恩無幾日
帰国定何年

義ヲ慕フ 名空シク在リ
忠ヲ輸(いた)スモ 孝全(まつ)タカラズ
恩ニ報ユル 幾日モ無シ
国ニ帰ルハ 定メテ何(いず)レノ年ゾ


 「訳」
人の踏み行うべき道である「義」を求めて励んできたが、空しい名声だけがあるばかり。故国をはなれ、唐土に来ているのは、君に忠を尽くすことになるが、親に孝行を尽くすことが出来なくなってしまっている。私も年を重ね、この先、親の恩に報いたくても、その日が何日もなくなってしまった。果たして日本へ帰国できるのはいつであろうか。

   「鑑賞」
親を思い、国を思う気持ちが率直に詠われた好い詩。杜甫の「絶句」にある「何レノ日か是レ帰年ナラン」と類似しています。仲麻呂が日本にとうとう帰ることができず、唐土で客死したことを思うと、結句に、より一層の重みが感じられます。

       「吟剣詩舞道漢詩集 続絶句編」日本吟剣詩舞振興会

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