yoshのブログ

日々の発見や所感を述べます。

漢語の意味、日本と中国では異なる

2024-07-18 06:28:11 | 文学
漢詩には、通常、漢語が使われますが、字面が同じであっても、日本と中国では意味が異なります。無論、漢詩における漢語の意味は中国流であり、日本流に読み替えてはいけません。
 
     故人  中国では、旧友
         日本では、亡くなった人
     城   中国では、都市や町
         日本では、お城やとりで
  多少  中国では、「多い」の意味
      日本では、「少ない」の意味
  人間(ジンカン)  中国では、俗世間のこと
            日本では、ひと
  遠慮   中国では、深い考え
       日本では、控えめにする
  野望   中国では、「野面をながめる」の意味
       日本では、「大それた望み」
  大人(タイジン)  中国では、徳のある人
            日本では、おとなや成人
  夢中   中国では、夢のなか
       日本では、熱中するさま
  仰天   中国では、天をあおいで嘆息する
       日本では、びっくりする
  偲    中国では、強い、忠告しあう
       日本では、しのぶ
  同情   中国では、同じ思いをもつ
       日本では、おもいやり
  無念   中国では、何も考えないこと
       日本では、「残念」の意味
  外人   中国では、仲間以外の人
       日本では、外国人
  器量   中国では、才能と度量
       日本では、見目や顔かたち
  学者   中国では、学ぶ途中の人
       日本では、学問にすぐれた人
   王維の詩 「西のかた陽関を出づれば故人無からん。」
   李白の詩 「春風 洛城に満つ」
   孟浩然の詩 「花落つること知る多少」

三村公二 「學士會報 No.954」 2022
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剛毅木訥 仁に近し

2024-07-01 06:23:51 | 文学
儒教では仁を大切にしています。仁者、仁術、仁義、仁愛、仁慈、仁徳、仁政、仁代、仁世、仁王、仁恩、仁君、仁將、仁傑、仁道、仁侠という語もありますが、仁は他人をいつくしむ、思いやるという意味であり、中国と日本では、とても尊重されています。「論語」の中に、仁を述べた語句があります。

「剛毅木訥 仁に近し」は「論語・巻第七・子路第十三」二七にある言葉です。
例えば、奈良のある宮大工は次のように言うそうです。「頭が切れたり、器用な人より、ちょっと鈍感で誠実な人の方がよろしいですな。」器用な人は苦もなく先に進んでゆけるので、往々にして「本当のものをつかまないうちに作業を終えてしまう。反対に不器用な人は「とことんやらないと得心ができない」から、要所を疎かにせずに熟達すると。

また、次の言葉もあります。
子曰く「巧言令色 鮮矣(すくないかな)仁」は、「論語 巻第一 学而第一」 三にある言葉です。
先生はいわれた。「言葉上手と顔良しには、仁徳はほとんど無いものである。」
  
  鷲田清一 「折々のことば」朝日新聞
  金谷治 訳註 「論語」岩波文庫  

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 春夜喜雨 杜甫

2024-06-24 06:24:47 | 文学
盛唐の詩人、杜甫の五言律詩を紹介します。

 春夜喜雨

好雨知時節
当春乃発生
随風潜入夜
潤物細無声
野径雲倶黒
江船火独明
暁看紅湿処
花重錦官城

  「読み方」

 春夜 雨ヲ喜ブ

好雨 時節ヲ知リ
春ニ当ツテ乃(すなわち)チ発生ス
風ニ随ヒテ潜(ひそ)カニ夜ニ入リ
物ヲ潤シテ細ヤカニシテ声無シ
野径 雲ハ倶(とも)ニ黒ク
江船 火ハ独リ明ラカナリ
暁ニ紅(くれない)ノ湿(うるお)エル処ヲ看レバ
花ハ錦官城ニ重カラン
 
「訳」

よい雨は降るべき時節を知っており、春になると降りだして、万物が萌えはじめる。雨は風につれてひそかに夜まで降り続き、こまやかに音もたてずに万物を潤している。野の小道も雲と同じように真っ黒であり、川に浮かぶ船のいさり火だけが明るく見える。夜明けに、赤くしめりをおびたところを見るならば、それは錦官城に花がしっとりぬれて咲くいている姿なのだった。

「鑑賞」

35歳の杜甫は官を求めて都長安を出て放浪しましたが、48歳で四川省の成都に到り、浣花渓(かんかけい)のほとりに草堂を築いてしばしの安らぎを得ました。この詩は浣花草堂での春の雨をうたって、もの静かなうちにも喜びのあふれた作となっています。前半は春雨に育まれる自然を、後半は夜と翌朝の景をうたい、いさり火の一点の赤から紅の花びらへと拡散していく。詩句の中に「喜」の語は一つもないが錦官城(=成都)の町いっぱいに咲く花に目を細める姿が偲ばれます。

 石川忠久 「漢詩紀行」日本放送出版協会
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あふげばたふとし

2024-06-20 06:23:42 | 文学
「仰げば尊し」を旧仮名づかいで書きますと「あふげばたふとし」となります。昔の子弟関係は、現代とはややおもむきが異なり、仰ぎ見て尊敬される師と、頭をたれて教えを聞く謙虚な弟子という関係であったと、教師役を多く演じた俳優の武田鉄矢氏も憧れをこめて語っています。「頭(こうべ)を挙(あ)げて山月を望み、頭を低(た)れて故郷を思う」という李白の詩「静夜思」の情景を思い起こします。

以下は、嘗て、卒業式の定番として歌われた「仰げば尊し」に関する話です。従来この歌は、明治初期に、文部省音楽取調掛、高遠藩士の子弟、伊澤修二の作詞・作曲いわれていました。伊澤は、貧しい家で育った後、東京帝大に進みました。アメリカ留学中、ベル研究所で、友人の金子堅太郎と共に日本人で初めて、電話器を使ったということです。従って、世界で最初に電話器で話された言語は日本語であったそうです。金子堅太郎は、後に外交官となり、伊藤博文総理の命で、アメリカ大統領と大学の同窓という縁をたぐって日露戦争の終結交渉に貢献しました。
「仰げば尊し」の原曲についてはわかっておらず、長い間、小学校唱歌集における「最大の謎」とされて来ました。ところが最近になって、一橋大学名誉教授の桜井雅人氏が、この歌の曲の出典を突き止め、アメリカで19世紀後半に初めて世に出た「Song for the Close of School」、所謂「卒業の歌」の旋律が、「仰げば尊し」の原曲であることが判明しました。原歌には「師の恩」「身を立て、名をあげ」という歌詞は無いそうですが、私は日本の「仰げば尊し」の歌詞、曲、共に愛着を感じます。

 1.仰げば尊し 我が師の恩
   教(をしへ)の庭にも はや幾年(いくとせ)
   思へばいと疾(と)し この年月(としつき)
   今こそ別れめ いざさらば
 2.互(たがひ)に睦みし 日ごろの恩
   別るる後(のち)にも やよ忘るな
   身を立て名をあげ やよ励めよ
   今こそ別れめ いざさらば
 3、朝夕馴(なれ)にし 学びの窓
   蛍の灯火 積む白雪
   忘るる間(ま)ぞなき ゆく年月
今こそ別れめ いざさらば
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薫風通ふ春五月

2024-05-07 06:29:28 | 文学
宇田博氏は、今の時期にぴったりの名句「薫風通う春五月」とよくぞ言ってくれました。
 「薫風通ふ春五月」は旅順高等学校の最初の寮歌です。作詞は「北帰行」も作った故・宇田博氏です。今の季節に合う題名です。「紅萌ゆる丘の花」や「春爛漫の花の色」などと共通する伝統の寮歌の気分が感じられます。

 薫風通ふ春五月

 父祖奮戦の地に立てば
 肉弾の跡 草萌えて
 楊柳岸に陰淡く
 渤海湾の波青し
 旅順の海に船をやり
すずろに夢の櫓を漕げば
異郷の空に日が暮れて
陰茫々の海遠く
おお故郷の宵の星
異郷の日  (以下略)

戦時下らしい歌詞です。旅順高等学校を去った自由人、宇田氏は、この後、東京に帰り、東大文学部を卒業して東京放送に勤務し、1995年に73歳で永眠しました。葬儀には「北帰行」と「薫風通ふ春五月」が、くり返し演奏されたそうです。
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天道 是か非か

2024-05-04 05:54:58 | 文学
この言葉は、司馬遷の「史記 伯夷列伝」にあります。近頃、凄惨な事件が報道されるにつけ、果たして天道はあるのかと、不肖も疑問を覚えます。

「意味」 
   この世の秩序や運命は果たして正しい者に味方しているのか。この世には本当に正しい道理があるのか。「天道」は人間をつかさどる人力を超えた宿命。宇宙を支配する力。「是か非か」は、正しいのか、まちがっているのかということ。運命に対する基本的な疑問を提示した句です。

 「原文」
武王已平二殷乱一、天下宗レ周。而伯夷叔斉恥レ之、義不レ食二周粟一、隠二於首陽山一、采レ薇而食レ之。・・・・・・遂餓二死於首陽山一。由レ此観レ之、怨邪非邪。或曰、天道無レ親、常与二善人一。若二伯夷叔斉一、可レ謂二善人一者、非邪。・・・・・・行不レ由レ径、非二公正一不レ発レ憤、而遇二禍災一者、不レ可レ勝レ数也。余甚惑焉。儻所謂天道是邪非邪。


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偶成 朱熹

2024-04-25 06:06:39 | 文学
南宋の詩人で、哲学者「朱子」として著名な朱熹(しゅき)の「偶成」を紹介します。少年時代に師から教わりました。

  偶成

少年易老学難成
一寸光陰不可軽
未覚池塘春草夢
階前梧葉已秋風 
 
     「読み方」
少年老イ易ク 学成リ難シ
一寸ノ光陰 軽ンズベカラズ
未ダ覚メズ 池塘 春草ノ夢
階前梧葉 已(すで)ニ秋声 

      「訳」
若い時代はうつろいやすく、学問というものはなかなか成就しない。
それゆえ、ほんのちょっとした時間すらも、おろそかにしてはならない。
池のほとりに春の草が萌え出して楽しい夢からいまださめきらないうちに、
早くも庭先の梧桐(あおぎり)の葉を落とす秋が来たことに驚くのです。

         「鑑賞」
朱熹は南宋の詩人であるばかりでなく、哲学者として朱子の呼び名で有名であり、その学問、朱子学は後世に多大な影響をあたえました。この詩は、そうした学者の面目躍如たるもの。夢多い青少年期の努力いかんで、学問の成果も決まるのだから、刻苦勉励せよ、という「少年老い易く・・」の有名な起句・承句が一篇の主題。このお説教の詩を、春草、梧葉のしゃれた比喩が救っています。朱子らしい機知にとんだ詩です。

        石川忠久 「NHK 漢詩紀行」NHK出版

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東照神君 遺訓

2024-04-22 05:54:01 | 文学
東照神君 徳川家康公には次のような遺訓があります。


人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。
不自由を常と思えば不足なし。こころに望みおこらば困窮したる時を思い出すべし。堪忍は無事長久の基、いかりは敵と思え。
勝つ事ばかり知りて、負くること知らざれば害その身にいたる。
おのれを責めて人を攻むるな。
及ばざるは過ぎたるよりまされり。

この意味は、おおよそ次のようなものです。

人の一生というものは、重い荷を背負って遠い道を行くようなものだ。急いではいけない。
不自由が当たり前と考えれば、不満は生じない。
心に欲が起きたときには、苦しかった時を思い出すことだ。
がまんすることが、無事に長く安らかでいられる基礎で、怒りは敵と思いなさい。
勝つことばかり知って、負けを知らないことは危険である。
自分の行動について反省し、人の責任を攻めてはいけない。
及ばざるは過ぎたるに勝れり。
   
       戦国時代を終わらせ、日本に260年もの長期の平和をもたらした人物の言葉
     には、深い洞察があり、さすがに達人の名言です。

       不肖は最後の「おのれを責めて人を攻むるな。及ばざるは過ぎたるに勝れり」に特に共感を覚えます。
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枕詞

2024-04-06 05:49:33 | 文学
日本には「枕言葉」という美しい言葉があります。
枕詞は短歌によく使われます。思ったより沢山ありますが、例えば以下のようなものがあります。
     
  (枕詞)  (掛かる言葉)
あきつしま  大和
さざなみの  近江
あおによし  奈良
みすずかる  信濃
とぶとりの  飛鳥
かみかぜの 伊勢
やくもたつ  出雲
さねさし   相模

たらちねの  母
ぬばたまの  夜・黒
ちはやぶる  神
もののふの  八十
あしひきの  山
からごろも  着る

 枕詞には、意味を抜いて歌を単純化し、調べを調えるという効果があります。

      たらちねの母が吊りたる青蚊帳をすがしといねつたるみたれども
                                 長塚 節
      さねさし相模の小野に入り来り夕かげりはやし紅梅の花
                                 土屋 文明




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シルバ- 川柳

2024-03-31 06:44:15 | 文学
  思わず吹きだすシルバ-川柳を紹介します。

お見舞いにぞろぞろ来たらそろそろか   
  何をしにここに来たかと考える
  ばあさんの手作りマスク息できず
  耳鳴りもピ-シ-ア-ルと音がする
  オレオレの相手をしたいほどの暇
  デイサ-ビス「お迎えです」はやめてくれ
  朝起きて調子いいから医者に行く
  「インスタバエ」新種の蠅かと孫に問い
「ご主人は?」「お盆に帰る」と詐欺に言い
マイナンバ- ナンマイダ-と聴き違え
家事ヘルパ-来られる前に掃除する
金が要る息子の声だが電話切る
やっと立ち受話器を取れば電話切れ
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