近頃、一般的には、「断、捨、離」を善とする風潮がありますが、作家の
五木寛之氏は、「捨てない生きかた」という著書の中で、物を「捨てない人生」の意義を説いておられ、共感するところが多々ありました。五木氏は次のように書いています。
ぼくはひねくれた人間です。流行に逆らうことにひそかな生き甲斐を感じてきたようなところがあります。表面的には時流に追従しているふりをして、心のなかではそれを演じている自分を面白がっている、そんなねじれた子供でした。
いまもその性格のねじれは、改まるどころか年とともに強まってきたらしい。
「不要不急」という表現に、おや、と思うのです。
必要を満たすだけで、人は生きていけるのでしょうか。
そもそもこの地球において、私たち人間こそが「不要不急」な存在なのではないか。
しかし、不要不急な人間にも生きる意味があるとすれば、不要不急なモノたちにも断捨離されない理由があるはずです。
・・・・・中略・・・・・
「捨てない生き方」も悪くない。
手に入れるのに苦労したとしても、たやすく手に入ったとしても、いまそこにあるモノには、手に入れた時の感情と風景、そして数年、数十年とともに時を過ごしてきた(記憶)が宿っています。
捨てるな、とはけっして言いません。しかし、モノをどうしても捨てられない生き方ということには、素敵な道理がちゃんとあるということを知っておいていただきたいのです。
また氏は、テレビで記者のインタビュ-に応えて次のような話をされました。
この中に袋が入っているんですが、黒いこう米粒みたいなものが入っています。これ、私が非常に親しくしていたある学者の方が、インドの「祇園精舎」の発掘を何年もおやりになっていてね。その発掘現場で、なんかズボンの裾に入り込んできて帰国して洋服をハンガ-に吊るそうと思ったらバラバラこぼれてきたっていう。それを分けてくださったんですけれども。2500年くらい前の米だっていうんですよ。一粒食べれば10年寿命が延びる、なんていうご利益があるかもしれないけれど。いずれにしても「祇園精舎」ってものがあった頃にその時代の人達が調理をして、あるいはストックしていたものが、地中に埋まって今こう出てきたっていうね。ロマンがあってね、面白いんですよ。その頃の人のことを思い出したり、自分がその時の人間だったらどうだったんだろうなって考えたりね、いろんなことがあってね。
不肖も、もし祇園精舎の米を入手できたら大事にするだろうと思いました。
五木寛之「捨てない生き方」マガジンハウス
五木寛之氏は、「捨てない生きかた」という著書の中で、物を「捨てない人生」の意義を説いておられ、共感するところが多々ありました。五木氏は次のように書いています。
ぼくはひねくれた人間です。流行に逆らうことにひそかな生き甲斐を感じてきたようなところがあります。表面的には時流に追従しているふりをして、心のなかではそれを演じている自分を面白がっている、そんなねじれた子供でした。
いまもその性格のねじれは、改まるどころか年とともに強まってきたらしい。
「不要不急」という表現に、おや、と思うのです。
必要を満たすだけで、人は生きていけるのでしょうか。
そもそもこの地球において、私たち人間こそが「不要不急」な存在なのではないか。
しかし、不要不急な人間にも生きる意味があるとすれば、不要不急なモノたちにも断捨離されない理由があるはずです。
・・・・・中略・・・・・
「捨てない生き方」も悪くない。
手に入れるのに苦労したとしても、たやすく手に入ったとしても、いまそこにあるモノには、手に入れた時の感情と風景、そして数年、数十年とともに時を過ごしてきた(記憶)が宿っています。
捨てるな、とはけっして言いません。しかし、モノをどうしても捨てられない生き方ということには、素敵な道理がちゃんとあるということを知っておいていただきたいのです。
また氏は、テレビで記者のインタビュ-に応えて次のような話をされました。
この中に袋が入っているんですが、黒いこう米粒みたいなものが入っています。これ、私が非常に親しくしていたある学者の方が、インドの「祇園精舎」の発掘を何年もおやりになっていてね。その発掘現場で、なんかズボンの裾に入り込んできて帰国して洋服をハンガ-に吊るそうと思ったらバラバラこぼれてきたっていう。それを分けてくださったんですけれども。2500年くらい前の米だっていうんですよ。一粒食べれば10年寿命が延びる、なんていうご利益があるかもしれないけれど。いずれにしても「祇園精舎」ってものがあった頃にその時代の人達が調理をして、あるいはストックしていたものが、地中に埋まって今こう出てきたっていうね。ロマンがあってね、面白いんですよ。その頃の人のことを思い出したり、自分がその時の人間だったらどうだったんだろうなって考えたりね、いろんなことがあってね。
不肖も、もし祇園精舎の米を入手できたら大事にするだろうと思いました。
五木寛之「捨てない生き方」マガジンハウス