yoshのブログ

日々の発見や所感を述べます。

断捨離の周辺

2018-03-29 06:02:50 | 文化
身の周りを単純明快にする「断捨離」の効用がよく採り上げられますが、「ガラクタも捨てなくていい」という意見を発見し、不肖のように決断力が欠けている者にとっては、やや、意を強くさせてもらえる指摘でした。
「断捨離の対極」も良しとする、五木寛之氏の意見を以下に紹介します。
 よくフランスのおばあさんで、狭いアパートにア-ルデコやア-ルヌ-ボ-の装飾
品や写真をたくさん飾り、モノに取り囲まれるようにして暮らしている人がいます。
彼女たちにとって、それらをひとつひとつ手にとって撫でては回想に浸るひとときは老いの寂寥と孤独から解き放たれる至福の時間なのです。音楽も、回想の憑代(よりしろ)となります。(中略)ここにきてレコ-ドが再び注目されているそうです。最近の風潮として、とにかくモノは捨てたほうがいいとされている。三年使わなかったモノは捨てろ、着ない服や靴は処分しろ、とよく言われます。しかし、一見ガラクタであっても、下山期の人間にとっては、すべてが回想の憑代となる。ですから無価値に思えるようなものであっても、実はかけがえのない財産なのです。何も高い古美術や貴重品でなくてもいい、たとえマッチ一箱でも、コ-スタ-一枚でも、手にとって回想しているだけで半日過ぎていく。そういう幸せな時間を、大事にしたいものです。

しかしながら、ガラクタ遺産の整理を任される人への配慮も必要かもしれません。

五木寛之「孤独のすすめ」中公新書ラクレ



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虚の時間 ホーキング博士

2018-03-26 06:26:04 | 科学
去る3月14日に、天才宇宙物理学者のホ-キング博士が他界されました。ご冥福を祈ります。ホ-キング博士の「宇宙創成」に関する洞察の中に虚の時間という説があるそうです。
虚数とは、2乗するとマイナス1になる数 i(虚数単位)を基にした概念です。では、虚数時間とは何か。不肖には直感的には、すぐに理解できませんが、ホ-キング博士はこれを宇宙創成の理解のための理論に応用されているようです。複素数平面の時間軸において、左側の虚の時間から右側の実時間に移る途中に、時刻がゼロの点が想像されますが、これが特異点で、ここが宇宙の始まりだといわれます。ここにビッグバンという現象があったというのが、宇宙創成の標準理論だと、いわれています。

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「節目」の読み方

2018-03-23 06:02:36 | 文学
3月21日付の某朝刊に、藤井聡太六段の中学校卒業式の記事がありました。その中で藤井六段が、「節目」という漢字を「ふしめ」ではなく、「せつもく」と読んでいた事を知り驚きました。その記事は下記の通りでした。

将棋の中学生棋士の藤井聡太六段(15)は20日、名古屋大学教育学部付属中学校の修了式(卒業式)に参加するにあたり、日本将棋連盟関西本部を通じて、「卒業というひとつの節目に際し、気持ちを新たにさらなる高みを目指していく所存です」とするコメントを発表した。
藤井六段は、四段だった昨年11月に通算50勝目を挙げ、「1局1局積み重ねた結果で、節目(せつもく)の数字となりました」と話した。(後略)

このように「節目」という言葉が2回出てきていますが、藤井六段は50勝目を挙げたときに「節目(せつもく)の数字」と言っています。漢字の「節目」の読み方、「ふしめ」と「せつもく」について調べたところ、辞書により見解は異なっていますが、「物事のくぎり」と言う意味で使うなら、「ふしめ」も「せつもく」もどちらを使っても構わないようです。

それにしても、中学生の藤井六段が、「節目」を「せつもく」と言っていたことに驚きます。何しろ「僥倖」とか「望外の喜び」という言葉を普通に使う中学生ですから。

コメント (1)
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鶏犬相聞

2018-03-20 06:08:06 | 文学
鶏犬相聞は「けいけんあいきこゆ」とか「けいけんそうん」と読むようです。老子の「小国寡民」や陶潜の「桃花源記」にある言葉です。ニワトリや犬の鳴き声が所々に聞こえるという意から村里が近くにあること。老子が理想とする平和な小国寡民の世界を象徴的に表しています。陶淵明もこれが、理想郷と考えたのでしょう。
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真面目の対岸    荘子

2018-03-17 06:39:04 | 文学
日本人の長所の一つに「真面目な事」があります。古来より日本人には、一所を懸命に守り、こつこつと地道に働いてきた伝統があり、一生懸命に頑張る姿に共感を覚える方も多いと思います。しかし、この姿勢だけでは情勢激変の時や物事がうまく行かない時、また不遇な時など、想定外の局面に立つ場合において柔軟な対応ができない恐れがあります。中国、古代の書「荘子」には、「真面目」とは対極の思想があります。「荘子」は中国・戦国時代に荘周が書いたとされる1万字にもおよぶ思想書です。儒教に対抗する老荘の教え、道教を説いています。荘子は、「無為自然」、「自由」、「超然」などを、多くの寓話により説いています。第一は「とらわれるな」。混迷の時代に望まれるのは、のびのびとした思考、軽やかなフットワ-クです。第二は「逆らうな」ということ。第三は「発想の転換」です。ワンパタ-ンの発想では必ず行き詰ります。まず、世間の常識を疑ってかかること。
過去の話ですが、日本の旧制高校において、一高は「自治」、三高は「自由」、」四高は「超然」を標榜しましたが、「荘子」は日本にもいろいろな影響を与えました。ちなみに人生の上りには「論語」を、人生の下りには「荘子」を読めともいわれます。

 守屋洋「荘子の人間学」プレジデント社

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将棋 師弟戦

2018-03-14 06:18:52 | 将棋
プロの将棋界には、公式戦で師匠と弟子が戦う場合があります。弟子が勝つと「恩返しができた」とも言われます。実際には、師弟戦が行われることは稀だそうです。師匠も弟子も健康で、現役としての地位を保っているのが難しいのでしょう。
 最近、藤井聡太六段(16歳、中学生)が師匠の杉本昌隆七段(49歳)に勝ちましたが、話題の師弟戦でした。
 過去には、2003年、山崎隆之五段(22歳)が師匠の森信雄七段(51歳)に勝ちました。
また、1987年、有吉道夫(引退、当時56歳)が師匠の故・大山康晴八段(68歳)に勝ちました。
 師弟戦は、12年~15年に一度しかない稀な勝負であり、上記の例では、すべて弟子が勝っています。師匠にとっては有難くない勝負ですが、全力で戦った杉本七段は、「負けたのは残念ですが、でも、今日という一日は素晴らしかった。藤井六段にお礼を言いたい」と話しました。それに対して藤井六段は「師匠にはたくさん教えていただいた。公式戦で対局出来てうれしいですし、さらに活躍していかねば、と思いました」と応えています。



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天地一沙鷗  杜甫

2018-03-11 06:23:14 | 文学
詩聖、杜甫の五言律詩を紹介します。


細草微風岸
危檣獨夜舟
星垂平野闊
月湧大江流
名豈文章著
官應老病休
飄飄何所似
天地一沙鷗


細草 微風ノ岸
危檣(きしょう) 獨夜ノ舟
星垂レテ平野闊(ひろ)ク
月湧ヒテ大江流ル
名ハ豈ニ文章ニテ著(あら)ワレンヤ
官ハ應(まさ)ニ老病ニテ休(や)ムベシ
飄飄(ひょうひょう) 何ノ似ル所ゾ
天地ノ一沙鷗(さおう)


「訳」

かぼそい草の生えている岸辺に、かすかな秋の夜風が吹きそよぐところ、高いマストをおし立てた舟に、杜甫はひとりさびしく、目をさましたまま、舟外の夜景を眺める。すると、無数の星くずのチカチカとまたたく夜空が、はるかかなた地平が垂れるあたりにまで、はてしもない平野はくろぐろとうちひろがり、月は波間に乱れ湧いて、悠々とはるけく流れている大川。この限りない巨大な空間に身をおくおのれが、いまわずかに、になっているものは詩のほまれであるが、それによってのみ天下に名をはせるのは、わが本意とするところではない。

自分の素願は、政治家としてのほまれを著すことである。しかし老病の身となってしまった現在では、その官も辞すのが当然と、落魄の身をひたすらさすらいの旅にうちまかせているが、さてこのさすらいの身は何に似ているかといえば、果てしない天地の間に、所定めずさまよう、砂浜の一羽の鷗の姿に似ているとでもいおうか。

「鑑賞」
杜甫は詩聖と讃えられましたが、本心では「君を堯舜の上に致(すす)めまいらせ、
再び風俗をして淳(あつ)からしめん」と欲していました。しかし、現実には官途が開けず不遇な日々を送り、不平詩人とか、「杜甫一生憂う」などとも言われました。

  高木正一「杜甫」中公新書   

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 割鏡不照

2018-03-08 07:31:13 | 将棋
将棋の久保利明九段がよく使う言葉です。

「割鏡不照」  割れた鏡は再び照らすことがない。
        失敗をくよくよ思い返さない、前向きな気持ちを指すようです。
「前後裁断」 前も後も断ち切って、現在に集中する事。つまり過去も未来も
断ち切って、現在に集中し、今を全力で生きること。
久保九段は、勝負師にとって重要なこうした境地を目指されているのかと
推測します。

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杞憂

2018-03-05 09:57:03 | 文学
「杞憂」という言葉の由来を紹介します。中国の古代に「杞」という小国がありました。
この国は、聖賢の国として有名な「夏」の末裔とも言われています。
「列氏・天瑞」によれば、「杞」の国の人が、明日にも天が崩れ落ちてくるのではないかと思い煩い、夜も寝られない状態になったということで、無用の取り越し苦労をすることのたとえです。ちなみに「杞」には、「くろやなぎ、くこ」という意味があります。
古代の中国の話は、現実味が乏しいですが、現代の日本にも、地震、台風などの天災やいろいろな災難が数多く待ち受けているように思われます。杞憂は他人事ではないようです。


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府西ノ池 白居易

2018-03-02 06:56:26 | 文学
中唐の詩人、白居易の絶句を紹介します。これは、白氏文集(「はくしぶんしゅう」と読むのが正しいらしい)巻ニ十八にある詩です。

府西池

柳無気力条先動
池有波文氷尽開
今日不知誰計会
春風春水一時来

府西ノ池
柳気力無ク条先ズ動ク
池ニ波文有リテ氷尽ク開ク
今日知ラズ誰カ計会スルヲ
春風春水一時ニ来ル

「訳」

柳の木は力なさそうに垂れ、風により先ず枝がかすかに揺れ動く。
池の水面には風により波紋がたって、氷もすっかり溶けてしまった。
今日、立春であるが、いったい誰がこのように事を計画したのであろうか。
春の風、春の水がいちどきにやってきたことである。

府西の池は東京で言えば、井の頭公園辺りにたとえられるでしょうか。
日本にも、この漢詩と同じ季節を詠った「早春賦」、「春は名のみの風の寒さや・・・」という名曲があります。

  藤野岩友 「漢詩」旺文社
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