yoshのブログ

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芭蕉と李白・杜甫

2020-03-04 06:18:31 | 文学
「虚栗(みなしぐり)」の跋文に芭蕉は、自ら下記のように述べました。
「栗と呼ぶ一書、其味四あり。李・杜が心酒を嘗めて、寒山が法粥を啜る」。
 ここで芭蕉は、李白や杜甫を愛読し、賞味したことを明かしたのです。
芭蕉は唐の詩人、李白・杜甫から大きい影響を受けました。特に杜甫に対して深い共感と尊敬を懐いていたといわれています。

紀行文の傑作、「奥の細道」の書き出しの文。
「月日は百代(はくたい)の過客(かかく)にして行きかふ年もまた旅人なり。」
これは、李白の次の文章の和文訳です。(見事な訳ですが)
  夫レ天地は萬物ノ逆旅(げきりょ)、光陰ハ百代ノ過客ナリ。
   (「春夜桃李園ニ宴スルノ序」李白より)

     
芭蕉39歳、「老杜ヲ憶フ」句があります。(老いた杜甫を憶う句)
  「髭(ひげ)風を吹いて暮秋歎ずるは誰が子ぞ」
一方、杜甫の漢詩
 「藜(あかざ)ヲ杖ツキ世ヲ歎ズルハ誰ガ子ゾ」
   (「白帝城最高楼」杜甫より)
次の句も杜甫と同様の心境を表現しているようです。(芭蕉晩年の句)
「秋深き隣は何をする人ぞ」

また、奥州、平泉で藤原氏の繁栄と衰亡を観て詠んだ句があります。
「夏草や兵(つわもの)どもが夢の跡」
 この句は次の杜甫の有名な漢詩を踏まえてよんだものと言えます。
「国破レテ山河在リ 城春ニシテ草木深シ」
    (「春望」杜甫より)

芭蕉が杜甫から得た最も重要なものは、自然を単なる感覚の美としてとらえず、自己の生の象徴として感じとることだったとも言われます。

    吉川幸次郎 「日本古典文學体系 月報」岩波書店

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