yoshのブログ

日々の発見や所感を述べます。

烏江亭に題す、杜牧

2015-05-30 05:10:02 | 文学
晩唐の詩人 杜牧の漢詩、七言絶句です。

  題烏江亭
 勝敗兵家事不期
 包羞忍恥是男児
 江東子弟多才俊
 捲土重来未可知
 
   烏江亭ニ題す
 
勝敗ハ兵家モ事期セズ
 羞(はじ)ヲ包ミ恥ヲ忍ブハ是レ男児
 江東ノ子弟才俊多シ
 捲土重来未ダ知ルベカラズ
 

「訳」

いくさの勝敗のゆくえは、兵法家でさえも、予測のつかないものである。
恥をしのび、肩身のせまい思いに耐え、再起をはかってこそ真の男子といえよう。
項羽の本拠地である江東の若者たちには、すぐれた人物が多いというから、
もし江東の地に力をたくわえて、地を巻き上げるような勢いで、再び攻めのぼったなら、その結果はどうなっていたかわからない。

  「鑑賞」
 わずかな手兵を従えた項羽は、ここの亭長(村長)から、長江を渡り捲土重来、力をたくわえて再挙を期するようにと勧められる。しかし項羽は、江東の子弟八千人を失って何の面目があろうかと、自ら首をはねた。

 我何の面目ありてか江東の父兄に見(まみ)えん  (史記 項羽本紀)

杜牧は、839年に烏江亭を訪れて、項羽の最期をしのんでこの詩を賦しました。もし、項羽
が亭長の勧めに応じて長江を渡っていたら、、、と空想しつつ、勝敗は兵法家でもわからないではないかと呼びかけて、項羽の死を惜しんでいる。
石川忠久 「NHK漢詩紀行」 日本放送出版協会

私は、英雄の潔い行動に感銘を受けました。
「捲土重来」と聞くと、足利尊氏が戦に負けて、九州にまで落ちたのちに、再び勢力を盛り返して上洛し、室町幕府を開いたのを想起します。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小満 ほととぎす

2015-05-27 05:31:40 | 文化
「小満」は聞きなれない言葉でした。実は「小満」は二十四節気の第八、5月21日でした。「万物盈満、草木枝葉茂る」時候だそうです。今年は「小満」直後の5月23日に、千葉の我が家ではほととぎすのさえずりがはっきり聞こえました。例年ほととぎすが鳴き始めるのは6月初旬の梅雨が始まる頃ですが、今年のほととぎすの初音は早い。そう言えば、今年は桜の開花も早かったようで、近年は季節が早く巡ってくる傾向があるようです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

捨てる力

2015-05-24 05:48:04 | 文化
将棋雑誌に作家の内舘牧子氏が次のように書いています。羽生善治 元四冠の著書「捨てる力」(PHP文庫)を読んだ。史上初の七冠を二十五歳で成し遂げた棋士となれば、当然ながら「天才」である。だが本を読んでいると、あらゆる角度からの努力を重ね、多くのことを自分に言い聞かせ、乗り越えてきたのだと胸にせまる。元横綱の大鵬関が、「私を天才だと言う人
が多いが、まったく違う。私は努力の人です。」と語っていたことが重なる。
 本著で多くの人に参考になるだろうと思ったのは、「勝つことばかりを考えていると、安全策
に走りがちになる。その姿勢は守りであり、進歩が止まってしまう」という考え方である。これは生きていく上で、「どちらかを選び、どちらかを捨てる」という決断に関わる。どちらを捨て、どちらを選べばいいのか。生きていれば誰しも、選択を迫られる局面に立つことは少なくない。その時、どちらを捨てるか。「勝つこと」を考えれば、安全な方を選ぶ場合が多いだろう。だが、その時は勝ったとしても、後になって悔やんだり、この勝ちは得策ではなかったと引き
ずることは、確かにある。どちらを捨てたのも、どちらかを選んだのも、自分自身なのだから
、後悔はしない。そう思っても、「あっちを捨てるべきだった。失敗した、、、」と嘆くものである。
  捨てることと選ぶことは難しい決断だと思います。
おりしも近藤真理恵氏の著書「人生がときめく片づけの魔法」という本が世界で読まれていると聞きました。ときめきのある物だけを残す、という整理法で、捨てる物には感謝をしながら手放す、日本人らしい心のこもった整理法が感動を呼んでいるそうです。

内舘牧子「「後悔しない選択」 将棋世界 2015―6
羽生善治 「捨てる力」PHP文庫

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

先達

2015-05-21 05:18:22 | 文学
先達(せんだつ)とは、その道の先輩という意味ですが、平たくいえば、師匠・先生・ガイド・ツアーコンダクターなどが該当すると思われます。有名な「徒然草」の「第五十二段」には以下のように書いてあります。

仁和寺にある法師、年寄るまで、石清水を拝まざりければ、心うく覺えて、ある時思ひ立ちて、ただひとり、徒歩よりまうでけり。極楽寺・高良などを拝みて、かばかりと心得て歸りにけり。さて、かたへの人にあひて、「年比(としごろ)思ひつること、果し侍りぬ。聞きしにも過ぎて尊くこそおはしけれ。そも、参りたる人ごとに山へ登りしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど、神へ参るこそ本意なれと思ひて、山までは見ず」とぞ言ひける。すこしのことにも先達はあらまほしき事なり。

石清水八幡宮は男山の山上にある。麓にあったのは付属の寺。仁和寺の法師は、付属の寺
にだけ参拝して山上の八幡宮を見落したのです。兼好法師は小さなことにも案内者(指導者)
はほしいものであると書いています。
 
 これは現代にも通用する知恵です。学問、芸術、芸事、スポーツ、旅行などすべてにおいて、先達は重要だと思われます。殊に、海外旅行におけるツアー・コンダクターの存在や情報は有用ではないかと思います。また、理系の研究などにおいては、先人の業績をよく調べて、先人の到達点から研究を開始することを常道としています。

日本古典文学大系「方丈記 徒然草」岩波書店 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

詰将棋(2)

2015-05-18 04:50:41 | 将棋
将棋棋士、伊藤果七段のツイッター上にあった詰将棋です。初級者対象、サタデー詰将棋の101作目、「初手の発見は容易でしょう。決め手は意外な俗手ですよ。9手詰です。」というコメントがありました。

私は5手目の発見に手間取りました。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ユーモア

2015-05-16 05:30:46 | 文化
ユーモアは上品な洒落、おかしみのことで、人生を楽しくしてくれます。
大相撲、五月場所、初日に、新鋭・逸ノ城が、大横綱・白鵬に勝ち、金星を上げました。
「故郷の両親に報告しましたか?」と記者団に問われ「電話がつながらなかった。多分、電波の届かない所にいるのだろう」と答えました。私はノンゴルの大草原を連想しました。
プロ野球のヒーロー・インタビューで柳田選手は、「私は私だ」と叫んだそうです。その通りですが、可笑しい。以前、柳田選手が「俺はギータ、柳田悠岐だ」と言ったのが下地にあるようです。オリンピックで金メダルを取った北島康介選手「超気持ちエー」「なんにも言えねー」それはごもっともです。流行語になりました。 「名人、振り返ってどの辺りで勝ったと思いましたか」の問に「相手が投了した時です。これもごもっともです。
イギリス人の痩せ我慢のユーモアもすばらしい。ドイツ軍の空襲によりロンドンの動物園に爆弾が落ちた時、タイムズ紙は「しかし、猿たちの士気はいささかも衰えていない」
空襲により、半壊した百貨店は「本日より入り口を拡張しました」という看板を出したそうです。(朝日新聞)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

個人主義

2015-05-13 05:34:41 | 文化
広辞苑によれば、個人主義について以下のように書いてあります。
個人を立脚点として、社会や集団も個人の集合と考え、それらの利益を優先させて個人の意義を認める態度。ルネサンスおよび宗教改革期における個人的・人格的価値の発見により自覚され、社会の近代化の進行に伴って普及するに至った。俗に、利己主義と同一視されるが、基本的に別である。
さて、同志社大学の卒業式で大谷実総長は、以下(要旨)のような祝辞を述べました。

私は、今日の我が国の社会や個人の考え方の基本、価値観は、個人主義に帰着すると考える。国や社会には何にも勝って、個人の自由な考え方や生き方を尊重しなければならないという原則だ。個人主義は、利己主義に反対し、全体主義とも反対する。
安倍首相の憲法改正の意欲は並々ならぬものがある。自民党憲法草案では、「個人の尊重」という文言は改められ「人の尊重」という文言になっている。個人主義を
柔らかい形ではあるが改めようとしている。皆さんは遅かれ早かれ憲法改正問題に直面するが、そのときには、本日あえて申し上げた個人主義を思い起こしていただきたい。そして、熟慮に
塾量を重ねて、最終的に判断して頂きたいと思う。

 「個人主義」という言葉には「全体主義」に反対するという意味があります。総長祝辞は
 全うで、勇気ある発言ではないでしょうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

薫風通ふ春五月 (再掲)

2015-05-10 06:24:34 | 文学
宇田博氏は、今の時期にぴったりの名文句「薫風通う春五月」とよくぞ言って
くれました。
「薫風通ふ春五月」は旅順高等学校の最初の寮歌です。作詞は「北帰行」も作った故・宇田博氏です。今の季節に合う題名です。「紅萌ゆる丘の花」や「春爛漫の花の色」などと共通する伝統の寮歌の気分が感じられます。

   薫風通ふ春五月

父祖奮戦の地に立てば
肉弾の跡 草萌えて
楊柳岸に陰淡く
渤海湾の波青し
旅順の海に船をやり
すずろに夢の櫓を漕げば
異郷の空に日が暮れて
陰茫々の海遠く
おお故郷の宵の星
異郷の日  (以下略)

戦時下らしい歌詞です。旅順高等学校を去った自由人、宇田氏は、この後、東京に帰り、東大文学部を卒業して東京放送に勤務し、1995年に73歳で永眠しました。葬儀には「北帰行」と「薫風通ふ春五月」が、くり返し演奏されたそうです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

年寄り

2015-05-07 05:29:20 | 文化
私も日々おとなしく暮らしている年寄りの一人ですが、下記のような話を聞くと、妙に元気が出てくるものです。
北野武映画監督は威勢がいいです。
家族から「いいおじいさん」と呼ばれているようじゃいけない。「早く死なねえかな、あのジジイ」と言われるくらいでないと。死んだ時に「やっとくたばりやがったか」って言われるようなね。そんなジイさんの方が元気があっていいよね。
石原慎太郎・元東京都知事の1月15日に政界を引退した時の弁。
「死ぬまで言いたいことを言って、憎まれて死にたい。」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

世間

2015-05-04 04:56:12 | 文化
「広辞苑」によれば、世間とは「有情の生活をする境界」「衆生世間」とあり、仏教から来た言葉のようです。平たくいうと、社会、世の中、でしょう。
世間話、世間離れ、世間知らず、世間に出る、世間が広い、世間体が悪い、わたる世間に鬼は無い、世間の口に戸は立てられぬ、とかく世間はままならぬ、渡る世間は鬼ばかり、など「世間」という言葉は様々に使われています。日本独特の言葉なのかも知れません。学者の養老孟司氏は「世間」について次のように書いています。
「世間にすんなり馴染めないからこそ、私は世間を関心の対象としてきました。そして、わからないからこそ、何とかそのルールを明文化したいと考えた。面白いのは、そうして考えたことを日本に住むアジアの人たちに説明すると、理解してもらえたことです。彼らも日本ではアウトサイダーであり、世間のメンバーにはなれません。だからこそ理解しやすいのでしょう。彼らには、こんな説明をしてきました。『日本には世間というものがあります。世間のメンバーではない人はメンバーとは別の扱いを受けます。しかし、これは差別意識の産物ではありません。あくまでも会員クラブのメンバーかどうか、ということです。』こういう感覚は日本人にはかなり共有されているのですが、アジアのほかの国はあまりそういうふうに社会を見ていません。だから日本社会に戸惑うのです。日本人自身も、意識的に会員制クラブを運営しているわけではありません。あくまでも無意識です。だから、アウトサイダーである私は手さぐりでルールを見つけて、それを書くわけです。世間に折り合いがついていないから、よくわからないと言うと、『だからお前は虫でも取っていろ。あとは任せておけ』という状態ならばいいのです。それが「自由」というものでしょう。ところが、現実にはその「自由」はすぐになくなります。戦前がその典型です。徴兵制がしかれて、嫌でも軍隊に引っ張られていった。それは現代でも同じようなものです。政治問題、社会問題に対して「お前は親○○か反○○か」と明確な立場を決めろと言ってくる。「とりあえず虫を見ていていいよ」とは言ってくれません。これが、うっとうしい状況を作ります。

世間と国家が同一になると、戦前の例のような危ない事態が生まれる恐れがあります。
憲法には、国民の自由権、人権を規定しています。(11条、12条、13条、18条、97条)
この点からも「日本国憲法」は護るべき憲法ではないでしょうか。第18条は、明快に「自由の拘束」を否定しています。

第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。


養老孟司「「自分の壁」 新潮社

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする