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黄鶴樓送孟浩然之廣陵  李白

2019-03-17 06:12:48 | 文学
詩仙、李白の七言絶句を紹介します。

黄鶴樓送孟浩然之廣陵
 
   故人西辞黄鶴樓
煙花三月下揚州
孤帆遠影碧空尽
唯見長江天際流

   黄鶴樓ニテ孟浩然ノ廣陵ニ之(ゆ)クヲ送ル

   故人西ノカタ黄鶴樓ヲ辞シ
煙花三月 揚州ニ下(くだ)ル
孤帆ノ遠影 碧空ニ尽キ
唯(た)ダ見ル長江ノ 天際ニ流ルルヲ


   「訳」
 わが友孟浩然は、西の地なるこの黄鶴楼に別れを告げ、春花がすみの三月に揚州へと舟で下ってゆく。ポツンと一つ浮かべた白帆が、ゆるゆると遠ざかり、やがて青空に吸いこまれるように消える。あとには、天の果てへと流れる水ばかり。

 「鑑賞」

黄鶴楼は武昌(現在の武漢市)にあります。昔、仙人が黄色の鶴に乗ってここより去ったといいます。それを記念して立つ高殿で、李白は年長の友人、孟浩然を見送りました。故人とは親友のこと。孟浩然は黄鶴楼から揚州まで旅をします。広陵は揚州の別名であり、長江下流の繁華な町です。孟浩然は五十歳近く、相変わらず浪人の身。武昌から揚州まで千キロもある長い舟の旅を、肩をすぼめるように出てゆく孟浩然。外は「煙花」の春だけにションボリした感じが浮き立ちます。送る李白の方も、実は三十半ばを過ぎて浪々の身です。思えば出身も年齢も違う二人が、いつどこで知り合い仲良くなったのでしょうか。黄鶴楼の上から、いつまでも見送る李白。あとに流れるのは水ばかり、と言った時、言いしれぬ感慨が胸を浸します。景と情がみごとに溶け合った、送別詩の最高傑作と言って過言ではないでしょう。

 石川忠久 「漢詩のこころ」 時事通信社
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