一昨日のこと、香川と愛媛の県境、余木埼から山に入って、毎年というわけではないけれど、機会あれば蕨を採りに行く場所に向かった。阿讃山脈縦走コースであるが、あまり人が歩かないので道はわかりにくい。とても質のいい蕨がとれるので、たのしみにして登ってきたのに、なんと、行き方が分からないではないか。確かこっちの方向、と踏跡を辿っていくとヤブになる。あれ?とばかり、行ったり来たりするも、道が見つからない。諦めて、真冬の時期に出直してテープでもつけよう。
うろうろしていたら、ストックを拾った。よく見ると、名字と携帯番号が書いてある。驚くだろうなと、わくわくしながら、さっそく電話してみる。女性の声が返ってきた。
「Iさんですか? 突然ですみません、三谷といいます。山でストックを拾いましたよ。」
「エッ!、もう戻ってこないかと思っていました。」
そうでしょうとも。ヤブ漕ぎの最中で落としたものは、まず返ってこないと思うでしょう。私もヤブ漕ぎ中、ストックを一本落としたことがある。名前は書いてあるが、電話番号は書いてない。またいつかヤブにはいって捜そうと思っている。電話番号書いとくんだった。
Iさんと話しているうちに、「元気の会」の会員であることがわかった。「元気の会」は、毎年縦走路のコース整備をしている。会員さんは高松周辺に住んでいる方が多い。山登りを趣味とする人たちのグループである。かつて、中高年のハイキングが流行った頃、メンバーの数は300人以上いたんじゃないかな。主催者の方のお人柄だろう。私は山は殆ど参加しないけれど、20年くらい前からの会員である。私の会員ナンバーは、今や二ケタにあがった。会員の高齢化と時代の流れで、メンバーの数も減ってきている。
Iさんが高松在住であること、熟年ハイカーであること、縦走路を歩いていることなどから、もしかしてそうかな、とは思った。私も会員であることを告げると、二人の会話は一気に弾んだのである。私の方はこの会の山行に滅多に参加することがないので、Iさんがこちらに来る折にストックをお渡しすることになった。お会いするのが楽しみである。案外、「あなたでしたか」なんて、知っている人だったりして。
新しいご縁ができそうな気がしてわくわくする。うちに泊まってくださったお客様とも、たくさんご縁ができた。親戚が泊まりに来るような気持ちさえする。切れる縁、繋がる縁、明日はどんな縁が生まれるのだろう。「縁がある」とは、中国語で「有缘」という。