この頃母に家に行って先ず確認することは、ぺぺの健康状態である。ぺぺとは、10年あまり前から母の家にすんでいる雌の柴犬だ。「越野晴美号」という、たいそうな名前が書かれた血統書とともにやってきた。「ぺぺ」は愛称である。ここには、ボクちゃんという、6歳くらいの犬もいる。母が被害妄想になったとき、吠える犬が欲しいといって知り合いから雄の雑種をもらった。母の認知症がすすんでからは、犬は放ったらかしになってしまった。散歩にいかないので屋敷内で放し飼い、毛は梳いてやらないのでボソボソ、哀れなものである。2年前母が施設にはいってからは、私がほぼ毎日、餌だけはやりにいく。
このあいだ、ぺぺの姿が見えないと思ったら、庭の、水を抜いてある泉水に中に落ちていた。まだ10歳あまりというのに脚がヨロヨロしている。歯は歯槽膿漏でガタガタだ。健康管理ができていないのである。ぺぺは繋ごうとすると噛みつかれそうだし、ボクちゃんは私を怖がって傍によってこないし、病気にでも罹って医者にいかねばならなくなったらどうする?
ぺぺを看取るのもそう遠い将来でもなさそうだ。最期は傍にいてやりたいと思う。母の家に詰めるか、私の家に連れてくるか、思い悩むところである。