心配のゴールデンウィークも終わった。
最高に疲れた。なぜなら、この正念場に、不覚にも風邪をひいてしまったのだ。最初は咳き、後に発熱(たぶん熱が出ていたと思う)と鼻水、いつもなら寝て治すけれど、仕事は忙しいわ、5月5日は娘婿の両親と伯父夫婦が、次男誕生のお祝いに、京都からはるばるきてくれる。はやく治しておかなくては、というので薬局で風邪薬を買ってきて、時間をみつけては、ひたすら寝て、身体をやすめた。託児所は勿論おやすみ、父さんが来てくれていたので子守は解放された。
フロント係り、食器洗いは夫に手伝ってもらってなんとか仕事はのりきった。ところが、夫、コウちゃん、娘、赤ちゃん、と、次々風邪の症状が出た。「お母さん、病院へ行って早く治さんからや」と娘にしかられた。ごもっとも。年寄りと小さい子がいる家では神経を使わねばいけませんでした。
母はこの頃とても手がかかるようになった。この1ヶ月の間に、2回道に迷って、自分の里にタクシーで行ってしまった。歩いて買い物に出掛けて、帰り道がわからなくなって、たぶんそのあたりの人にタクシーを呼んでもらったのだろう。電話帳を調べて、どこか思うところに電話する能力は、もうない。迷ったあげく、自分の家でなく、生まれた里に帰るのも痴呆老人によくみられる症状だろう。
その何日か後、早朝6時半に警察から電話がかかってきた。ああ終に・・・。いそいで母の家に駆けつけると、ピカピカのパトカーが門の前に止まっていて、中に警官2人と母が乗っている。コウちゃんに、こんなに真近でパトカーをみせてやったら、さぞや喜ぶだろうなあ。あの子はパトカーが大好きなのだ。
近くの池の側を徘徊していて、とあるお宅の玄関を叩いたらしい。その方が警察に言ってくれたのだ。帰りの道がわからなくなるのはいつものパターンだ。時間が時間だったから警察をよんでくれて、保護されたということだ。
警官が帰って、何処へ行くつもりだったのか聞いてみた。母の話では「車に2人の女の子を乗せて高松の方へ遊びに行った。女の子が池の傍で遊んでいた。目を離したすきにいなくなった。たいへんなことをしてしまった。あの世へ行かなくてはいけない」と罪の意識にさいなまれている。「夢でもみたんじゃないの?車なんてないんだし、運転なんてもうできっこないんだから」と説明してやってなんとか落ち着いた。
母は、とてもしっかりはっきりした口調で話す。ひとがみると、全然ぼけてないと言うだろう。娘の私がみても、なんでこんなにシャンと話ができるんだろうと思う。しっかりとボケた話をするので、時々とても腹が立つ。「それは違う。理屈で考えてもありえない。夢でもみたんじゃないの?」というと、怒って「あんたの方がボケとる」といわれるしまつ。むきになってはいけないのだが、このごろついつい声が荒立つ。