ドライブ中のこと、道端にヤギと鶏が飼われているところがあり、丁度女性が餌をやりに車で来たところだったので、見せてもらおうと車を停めた。「写真を撮ってもいいですか?」と訊くと「観光ではありませんから」と言われた。「?」私はどういう意味か分からず、写真を撮った。女性は、再度同じことを言った。あ、そうか、「観光ではありませんから、写真は撮らないでください」という意味だったんだ。鈍いなあ、ようやく気が付いた。女性は不快な思いをしたのだろうなあ。
海のシーズンには、物凄い観光客が訪れる。島の人々は、観光客をよく思っていないのだろうか。私のように無作法をする者がいるから、拒否する住民もいるのだろうなあ。民宿のご主人に訊ねてみると、ビーチに行くのに、水着のままで歩く観光客がいるという。それもビギニで。客は客のマナーを守らなければいけないのだ。深く反省した。
海辺に建つ高そうなリゾートホテル。ヒルギの林を伐採して開発したんだろうか。近くには、「リゾートホテル建設反対」の看板が立っている。私も、これ以上ホテルは建てないでほしいと思っている。島に入ってくる人数を制限すればいいと思う。
島に来て動いていると、観光業に従事する人のほとんどが移住者であることがわかる。ゲストハウスのオーナー、民宿の主人、カヌーのガイドやオーナー、カフェなど、私が接触した人全員が移住者だった。よそから来てもらわないと、観光業が成り立たない。
世界遺産になるってどういうことかなあ。西表島にはわんさか人が来るようになっただろうけれど、自然は守られているのだろうか。世界遺産になると、環境に配慮して厳しく制限がかかるはずだから、ならないよりはいいのかもしれない。森の中に勝手に入っていくことはできないだろう。ガイド付きで川をカヌーで遡って、決められた森の道を歩く以外は。
以前、NHK放送の番組で「ヒグマと老漁師」というのがあったが、あれはとても印象深かった。人とヒグマが共存して暮らしている知床半島が世界遺産になり、漁師はその地域で漁ができなくなった。民宿で出遭った、海洋研究をしている女性が、「世界遺産になると、そこで生活している人の暮らしが成り立たなくなる」と言っていた。難しい問題なのだ。
遍路が世界遺産になったらどうなる? 宿が足りなくて、移住してきた人々にゲストハウスを経営してもらう? 公営の宿舎をたてる? 巨大な観光地になって、四国の人々の暮らしも一変するかもしれない。