いつだったか、N響の金管五重奏団が四国中央市土居町に来るというので、夕方、ワクワクしながら車を駆って出かけたことがあった。田舎のことだから、当日券があるだろうという呑気な考えで行ったのが甘かった。ホールに着いたら「チケット完売です」と言われた。チケットを譲ってくれる人などあるわけもなく、骨折り損のくたびれもうけの哀しい気分で帰ったのである。
あれから数か月過ぎたある日、又N響五重奏団の演奏会があるというチラシを見つけ、当然のこと、前売り券を買った。おそらく29日も仕事はないだろうから。一般1000円、学生500円、何と安いこと。このコンサートは、土居町の記念行事のひとつらしい。
というわけで、コンサートが終わって家に着くまでの1時間の間、余韻を楽しみながら、満ち足りた豊かな心でいられたのである。人が人らしく生きるためには、空腹だけじゃなく、心が満たされなくてはいけない。満たしてくれるものは、本であったり、絵画や写真であったり、映画や音楽であったり、人によって様々である。芸術の力によって、人生に潤いがもたらされる。コンサートはたいてい夜に行われるので、仕事の繁忙期である春、秋は、私は行けなかった。それに、何より仕事を重視する、しなくてはいけない時期であった。幸か不幸か、今、毎日が日曜日みたいに暇である。私の充電期間としておこう。
このN響金管アンサンブルは、N-craftsというグループ名である。N響の職人という意味でつけたらしい。確かに素晴らしい職人芸だった。カッコよく華やかなトランペット、柔らかい優しい音色のホルン、グリッサンドがかっこいいトロンボーン、軽やかにメロディーまで吹いてしまうチューバ、ひとりひとりが素晴らしい芸術家である。人を感動させたり、いい気持ちにさせてくれる音楽は、彼らの日々の練習と努力から生まれる。また、トークも面白くて、会場をわかせた。
いい音楽を有難う、と心から感謝する。ブラスバンドをやっているのだろう、学生さんたちがたくさん聞きに来ていたが、「あんな風に吹けるようになりたい」と、明日からしっかり練習するんじゃないかな。意外と年配の方も多かった。ブラスバンドのOBじゃないかなと想像する。私もそのひとりだから。
4月に観音寺市民会館が完成する。N響本体も観音寺でコンサートをするとか、今日のメンバーが言っていた。この間、マルタ、ビッグバンドが来るようなチラシが送られてきて、「絶対行きたい!」と思っている。新しい市民会館は家からとても近くなり、これから、コンサートに行ける機会が増えそうで嬉しい。しかし、古い街並みが立ち退いて、見違えるようにきれいになったけれど、まだ道路が完全には広がっていない。催しがはねたあと、車がスムーズに帰っていけるか心配だ。
工事着工のとき、五洋建設さんの現場監督の若い男性が、マンスリーマンションを借りる前の10日間くらい、家で泊まっていた。その時、確か、「終盤になるととても忙しくなって遠方からも仕事にはいるはずだから、紹介しますよ」と言ってくれたのだけど、どうなったか、一番初めの基礎工事の長期滞在のあと、うちは全くお泊りがない。建物はもうほとんど出来上がっているはずだ。残念だった。営業や宣伝が足りない。