毎年春に寄ってくださるKさん、こちらのお遍路さんを最後に、カレンダーから、すべての予約メモが消えた。ゴールデンウイーク対策の厳戒令が発せられたので、しばらくはお客様はないと思われる。
納経所の8割が閉じられた。境内も入れないところがあるという。お遍路さんたちの話しによると、観音寺はクールである、大興寺は優しい、とか。遍路宿も、早くから休業しているところもあれば、うちみたいに受け入れるところもある。考え方は千差万別だ。私は休業要請されるまでは、営業する。大っぴらには言えないが。
Kさんがおいでたら、こんな時に、まだお遍路を続けておられることについて、お考えを聞いてみたいと思っていた。Kさんは連休前3月半ばから四国に入っており、今回10回目、番外もお参りされている。年一度の遍路、どうしても最後までお参りを続けたいそうだ。納経できなかったところは、コロナが落ち着いたら、車で埋めに来るとおっしゃる。納経できなきゃ意味がないと、一旦中断する人がほとんどだろうが、帰っていただくために寺を閉鎖するんだけど、Kさんのような方もいる。だから、私は開けとかないといけないと思っている。
結願まであと一週間かかる。
「香川は人に遭うことが多いから、小さくなって歩きます。お寺ではマスクもします。」
「国分寺辺りでは、鬼無でクラスターが発生しているから、気を付けてください。」
とお知らせした。関東までの帰りが心配。飛行機は1便しかないし、バスは運行してないらしい。新幹線は大丈夫だ。
6時に朝ごはんをあがって、6時半に元気に発っていかれた。どうかお気をつけて!
「家で何してる?」
友人に聞くと、
「断捨離してる」
という答えが返ってきた。
ゴールデンウイークの大仕事もキャンセルになり、気持ちがとてもラクになっている。毎日、母の家の草取りと、気になっていた、私のコレクションの、布や古い着物の整理をしている。断捨離はできない。捨てるものはない。私の片付けとは、ただ、こっちの箱からあっちの箱に移すだけなのだ。
娘3人が子供の頃、布を買ってきてはせっせと服を縫ったものだ。その端切れが段ボール箱にいくつもある。
私のデニムのスカートのウェストゴムが伸びて、履けなくなっていた。ゴムの入れ替えができないタイプのスカートなので、ウェスト部分を取って、端切れをパッチワークして取り付け、ついでにカラフルなポケットもくっつけた。この花柄は上の娘のワンピース、このチェックは二番目の娘のおむつパンツとか、懐かしい布がいっぱい。取り合わせを考えるのが楽しい。
普通なら捨てられる、色落ちした安いボロ服であるが、もう少し使ってやろう。できるだけゴミを少なくしたいと思っているので、完成したリフォームしたスカートを見て大満足した。
例年なら繁忙期の春、思いがけずお休みをいただけた。今年は、花の盛りに山へ行けそうだ。お遍路もアリかな、と思ったが、宿が休業という可能性もある。テント泊ができるなら問題ないが。
庭の花々が花盛り。左、アケビはいい香りを放っている。時々ハトが傍にとまっている。この中に巣を作りたいらしい。
カッコウソウが可愛らしく咲きだした。
春蘭、3年ぶりに花が出た。居るところが日陰になってしまったから、元気がない。移植しなくてはいけない。でもどこがお気に入りか、私には分かりかねている。
今年は、母の家も少しはさっぱりするかも。
あらゆる人の集まりがキャンセルされるなか、明日の二胡レッスンがあるかどうか確かめた方がいいなと思い、グループのラインを開けてみた。なんと、未読が何十件もある!読み進めると、休講であるとわかった。危機一髪。何と間が抜けているんだろう。ひょっとすると、明日、高松まで行って、がっくりして帰ってきたかもしれない。
私の友人は、ガラ携さえ、持ってはいるけれど、滅多に使わない。お遍路さんにも、稀に携帯をもたない人がいる。年配の方には、インターネットが苦手な人は結構いる。私もデジタルディバイドの仲間に入るなあと、自覚した。デジタル対応できなければ生きてゆけない時代になっている。取り残された感がある。
買い物も、未だキャッシュである。野菜は主に産直で買う。スーパーによっては、ポイントで還元される。うっかり有効期限が過ぎて失効するときがあるので、500円のお買物券を頂ける方がいい。そうは言っても、デジタルディバイドによる経済格差は、これからますます実感することになるだろう。
緊急事態宣言が出されて、2件のキャンセルがあり、私のカレンダーの予約名簿はすべて抹消された。けれども、歩いているお遍路さんの姿はチラホラ見かける。コロナの脅威がそれほど意識されてなかった頃、四国に入ってこられた方だろう。なんとか結願まで、というお考えだろう。これから入って来られる方は、まず、いない。
一昨日泊まられたリピーターのOさん、かなり早くから予約いただいていたが、このご時世、キャンセルの電話がかかって来るんじゃないかと思っていたら、予定通りお出でた。
夕食のとき、Oさんの携帯が鳴り、「ながお路」という宿からキャンセルされたとおっしゃる。へぇー、驚いた、宿からも断られるんだ。食事なしの素泊まりであれば、接触の機会が少なく、互いに感染の危険は多くないように思うが。どこの宿泊所も、部屋は空いている状態が続いている。連続して使用しない、換気、掃除を徹底する。そうすれば、感染のリスクは低い。泊めてあげればいいのに、と思う。
Oさん、高野山が終われば、公共交通機関が怖いので、レンタカーで茨城県の自宅まで帰ると言ってた。
「お遍路さんに食べてもらって」
と、Sさんから毎年のようにいただける筍。初物、丁度タイミングよくOさんにご賞味いただけてよかった。ご高齢のご主人が掘ってくださった筍、例年なら毎日筍尽くしの夕食なのに、今年は食べていただくお遍路さんがいない。
満開の桜の下で宴をする人もなく、せつない春である。