不覚にも今シーズン2度目の風邪をひいた。鼻の奥の粘膜が乾燥しているなと感じて二日後くらいに喉がヒリヒリし、四日目から咳きが出て、六日目から寒気がした。仕事、その他重要な用事が控えていたので、早く治す必要があった。風邪は医者に行かずに治す主義であるが、そんな悠長なことは言っておれず、一週間我慢して、とうとうお医者の門を叩いた。
「熱はありますか」
と、医者。
「あると思います」
と私。先生が、おでこの傍になにやら器械を近づけて、
「36.6度ですね」
最近の体温計は凄いなあ。服をもそもそ持ち上げて、脇の下に挟んだりしなくていいんだ。それにしてもゾクゾクするから少しは熱がありそうと思ったのに。私は平熱が低いのかもしれない。
体調が悪く、熱があるかも、というときには、敢えて計りたくないものだ。発熱という事実を突きつけられたら、もう起き上がれなくなりそうで。だましだまし仕事をしていくしかないのだ。その週末はお客様も少なく、お薬を飲んでずっと横になって休んでいたので、今はもうほとんど快復している。
今年も雲辺寺登山口のあたりの集落のSさんから、筍をたくさんいただいた。数年前までは全く存じ上げない方だったのに、毎年泊まってくださるNさんというお遍路さんのご縁で筍のお相伴にあずかっている。Sさんの亡くなったお兄さんにNさんがそっくりだそうで、毎年Nさんが通りかかるのを待っていて、お茶をお接待するのだそうである。そのうち、Nさんがうちに泊まられるのを知って、「筍を食べさせてあげてください」と、たくさんもってきてくれるようになった。ありがたいことである。Nさん、今年は6人グループできてくださった。筍ごはん、筍の天婦羅、煮物など筍づくしの献立でよろこんでいただけた。
その後も、あちこちから筍をいただいて、鍋総動員、筍が水に浸かっている。当然、うちでは毎晩筍ごはんである。たぶんよそでは出されないのだろう、お客様は喜んで食べてくださる。