キンランの花。その向こうはエンレイソウ。緑の中に優しい金色がまぶしい。
黄金の 明かりに愛し 花の精
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我が家の野草園に咲く幾つかの花の中で、私が最も大切にしているのがこのキンランの花である。この蘭は勿論日本古来のものであり、子供のころは駆け回った林の中などには、どこにでも無造作に生えて花を咲かせていたのを思い出す。同じような蘭の仲間にカキラン(=柿蘭)やササバギンラン(=笹葉銀蘭)がある。カキランは柿の実に似た色の花で、橙色に近い色をしており、ササバギンランは白い色の花である。皆同じような姿かたちをしており、又同じような環境を好んで咲いているようだが、どの種も次第に数を減らしているらしい。その中ではキンランが比較的多く自生しているようで嬉しい。
我家の野草園のカキランは守谷市に越して来てから、近くの山林の中で見つけたものを連れて来たものである。本当は連れてくるのは止めて、そこへ行って見ることができればいいのだが、以前同じような場所に咲いていたのを楽しもうと思っていたら、翌日にはもう誰かが持って行ってしまったらしく、見当たらなくなってしまったのだった。その後も残念な気持ちがずっと燻(くすぶ)っていたのだったが、別の場所に結構たくさん自生しているのを見つけ、1株くらいは連れて来てもいいのではと、相当に罪の意識を感じながら昨年略奪を敢行して持ってきて植えたのだった。1年切りで枯らしてしまっては申し訳ないと、土や下草のことも考えて元あった場所と同じ環境条件を用意して2年目を迎えたのだった。芽が出てくれるのかと本当に心配していたのだが、無事に去年枯れて消えた場所に芽を出してくれたのを見た時は、思わず「おーっ、出たあ!」と快哉(かいさい)を叫んでしまった。嬉しかった。
その花が今咲いている。開花の真っ盛りだ。毎日3回以上訪れては花を観察している。開花の期間は1週間ほどだろうか。なんとも言えない澄んだ黄金色の暖かさを覚える花だ。いいなあ、と思いながら、古希を超えたことなど忘れて、少年の気分になって花を見詰めている。その瞬間は自分が生きていることを忘れながら、その一方でしっかりと生きている喜びを実感している。