山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

日本海の虹の話

2007-12-04 06:30:34 | くるま旅くらしの話

海に架かる虹というのをあまり見たことがない。特に太平洋に架かる虹は一度も見たことがない。海の近くに住んでいれば、時には見ることがあるのかもしれないが、海からかなり離れた場所では、それを見るチャンスはない。私の住んでいる守谷市では、せいぜい筑波山の手前に途切れ途切れの小さな七色のアーチがかかるのを年に一度見られればラッキーということになる。

ところで、虹というのはどんな時にできるのかといえば、これは大荒れの天気が殆どで、今まで晴れていた空が、突然黒雲に覆われ、いきなり雨が降ったかと思えば、今度は俄かに太陽が顔を出して一しきり穏やかな天気になる。そのような時に、ふと見ると大空に七色のアーチが架かるのである。その原理は良く解らないけど、お天道様と水との係わり合いがもたらす大自然の戯(たわむ)れ現象のようなものなのかもしれない。

秋から冬にかけての日本海では、虹を見ることが多いような気がする。以前も越前海岸沿いの道を通っていて、日本海に架かる虹を見たことがある。その時は、越前岬近くの水仙ランドという所に立ち寄り、暖かい穏やかな天候の下で、満開の水仙の花を堪能していたのだったが、気がついたら空が険悪な様子となっていたので、驚いて車に戻り、そこを離れたのだった。その後の行程は、とてつもない風雨吹きすさぶ悪天候となり、海が吼()え、荒波の狂う凄まじい状況の中を走ることになり、いやはやとんだ事になってしまったと、膨らむ不安を抱えながら早く海側から離れたいものだと思いながらの走行だった。が、しばらく経つと雲の切れ間から日が差し、なんとその向こうに巨大な虹が海の上に浮かんでいるではないか!思わず、オーッと声を発してしまった。その時初めて海に架かる虹を見たのだった。感動した。

今回の北陸の旅では、再び日本海に大きく架かるその虹を見たのだった。関西エリアの旅を終わり北陸は金沢方面に向かうその移動日は、朝から雨模様の天候だったが、日本海側に出て敦賀を通過する辺りから、かなりの雨降りに加えて強風が吹きすさぶ悪天候となった。いつもは穏やかな表情の若狭湾は、荒れ狂って海の底までも振い動かすと思われるほどの巨大なうねりと白濁する大波を岩にぶち当てて唸っていた。風に弱い我が愛車は、海岸の崖に沿って造られたR8を突風が吹かないことを願いつつ、恐る恐る走ったのだった。幸い何事もなく通過できたのだが、途中ふと気がつくと前方に大きな虹が架かっていた。海に架かる虹である。先ほどまでの恐怖心は何処へやら、その美しい彩りになぜか安堵したのだった。

虹には人の心を捉える不思議な力があるような気がする。大自然がその凄まじい脅威を見せつけた後の、微笑みのようなものかもしれない。大空に光を使って描かれる大自然の芸術は、何れも不可思議な作品だが、その中でも虹は最高の傑作のような気がする。そして虹を動きとして捉えると、大自然の激しい気象変化の中に隠された一瞬の秘密の表情のようにも思えるのである。激しい変化であったがゆえに、その一瞬の優しさに我々は癒しの感動を味わうことができるだと思う。

旅をしていると、大自然の様々な現象にぶつかるのだが、北陸の海、すなわち日本海の寒い季節の気象変化の激しさは、生ぬるい関東の地に住む者には、強烈な戒めの刺激となるように感じている。まだ本当の日本海の冬を見たことがないので、何ともいえないが、砕ける波が凍り付いて散るというのは、同じ緯度の太平洋では決して見ることのない現象であろう。海に架かる虹を見て、驚いている場合ではないよというのが彼の地に住む人たちのコメントに違いない。

しかし、私は今度の旅の中で、海に架かる虹を見ることができたことを、旅の大きな収穫であったと思っている。毎年一度は、海の上に架かる巨大な七色のアーチを見たいものだと思っている。激しさの中に垣間見る一瞬の和みを味わいたいものだと思っている。

コメント
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