山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

旅は人を元気にする

2007-12-23 09:39:54 | くるま旅くらしの話

昨日、愛媛県は松山市在住のWさんご夫妻から名産のみかんなどをお贈りいただいた。その中には、お二人からのお手紙に添えて、ご夫妻のことが取り上げられている記事の掲載されている月刊雑誌「現代」が入っていた。更に、奥様のお心遣いなのか、みかんに混ざって丁度食べごろのあたご柿の干し柿が数個入っていた。そこいら辺のみかんの箱を送って頂いたのではなく、真に手作りのお心の籠もったプレゼントであった。嬉しいプレゼントであった。

Wさんご夫妻とは、今夏、北海道の別海町でご一緒したのだった。別海町の中心市街地区にある、ふれあいキャンプ場は、私たち夫婦の北海道における最も気に入りのキャンプ場で、毎年長期滞在をする場所の一つでもある。Wさんはそこの利用者の最長老でもある。キャンプ場が出来て20年近くなるようだけど、この間に管理人さんは3度代わったらしいが、Wさんはその3人全てを良くご存知とのこと。キャンプ場の経営者も町の関係者との親交のパイプも太く、キャンプ場滞在時は新聞を届けてくれる有志の方がいらっしゃるのである。

別海町のふれあいキャンプ場では、恐らく日本のキャンプ場の中では唯一此処だけだと思うけど、毎年8月20日の夕刻に、その日此処に滞在のキャンパーによる一大パーティが開催される。勿論キャンプ場のご好意や町の関係者のご支援を得ての話だが、このようなキャンパー主催の野外パーティが開かれるキャンプ場を私は他に知らない。キャンパーは道外、道内からの様々な人たちなのである。このお祭りを運営するきっかけを作られたのがWさんであり、Wさんはその集まりの初代会長さんでもあった。そのようなお話を、始めてこのパーティに参加させた頂いた数年前に、他の方から伺ったことがある。

そのWさんと親しくお話をさせて頂いたのは、今年が初めてだった。今年は、私どもも別海での長期滞在をもくろんで8月初めにふれあいキャンプ場を訪れたのだったが、その時にはもうWさんは1ヶ月も前からお出でになっておられ、キャンプ場のいつもの位置に車を留められ、タープを張って北国の夏の生活を楽しんでいらっしゃった。そのお暮らしぶりについては、このブログでも紹介させて頂いた(9月23日:男の美学)が、私は本当にその姿に胸を打たれたのだった。

昨日同封されていた「現代」(2008年1月号)の記事は、加藤仁というノンフィクション作家の方がお書きになっているシリーズもののようで、「入門『大人旅』」というタイトルで、その第2話は「喧嘩も楽し『夫婦旅』」というものであった。このお話の中の3番目あたりにWさんご夫妻のことが簡潔に紹介されていた。凡そは直接Wさんから伺った内容だったが、ご存知上げていなかったことも分って、Wさんご夫妻を知る上で参考になった。

Wさんの生き方については、男の美学の時にも書かせて頂いたが、私の旅に対する一つの信念として、「旅は人を元気にする」というのがあるが、Wさんご夫妻はその体現者であり実践者だと思う。そもそものくるま旅のきっかけが、奥様が体調を崩されたことから始まっているとのこと。奥さん孝行のために56歳で早期退職をされ、それ以来マイカー、ワゴン車の手作りキャンピングカー、そしてキャブコンと乗り継いで、全国にまたがるくるま旅を奥さんと共に続けて来ておられ、それがもう20年以上続いているのである。

70歳の時に、胃にポリープがあるのを検査入院で発見された時に、「もはやこれまで、…」と考え、「心残りがあるのは、本物のキャンピングカーに乗らずして、あの世へ逝くこと」と思われたとのこと。そして退院されると、直ぐにキャブコン購入の手配をされたのだった、と記事に書かれていた。この決断こそが大切なのだと私は思っている。多くの人はこの決断が出来ずに、更なる病院通いをしながら朽ち果ててしまうのではないか。Wさんは、この決断によって生きるという力をより一層強められたのではないかと信じて疑わない。

さらに加藤さんの記事の中で、「行くか」「行きたい」という見出しの箇所があるが、この夫婦間の会話の背景は、何と奥様が骨粗しょう症で脊髄の圧迫骨折で入院して3ヵ月後に、猛暑に見舞われた松山から、北海道へ抜け出す相談の会話なのである。医師に内緒でフェリーの予約をしてお盆が過ぎる頃別海町へ向かい、そこで2ヶ月を過ごされたとのこと。驚くばかりの勇気と信念である。

そして昨年は、今度はご主人が病魔に魅入られ、春先に7時間に及ぶ前立腺がんの手術を受けることになったのだが、尿漏れが完治しないまま迎えた夏に、「このままアウトドア生活とおさらばすると、すぐにあの世からのお迎えが来る気がしてならない。だったら行くべきだと思いましてね」と、何とこれまた北海道へ渡り3ヶ月もの暮らしを実行されたのだった。

今年は「自分たちの病の進行を止めるには出かけるのがいい。松山におっても暑くて、ボケていく」と、2ヵ月半を北海道で過ごされたのだった。この時に私たちはご一緒できたわけである。

これらの一連の暮らし方を、老人の我がままなどとコメントする輩は、人間が何かを知らない、首から上だけで生きている人だと思う。人は生きるためには何らかの励みとなるもの、生きがいとなるものが不可欠だ。それを無くしたとき、人は急速に人であることを失ってゆくように思う。人が人であるためには、活き活きと生きることが大切だと思っている。人は、いずれはあの世へと旅立たなければならないが、あの世とこの世のけじめは、PPK(ピンピンコロリ)といきたいものである。生ける屍のような生き方は最も避けたいものである。

話は少し暗い方に傾き、Wさんには大変失礼な話となったが、この加藤さんのお書きになった「大人旅」「夫婦旅」の中にWさんご夫妻が取り上げられたのは、真に正鵠を射たものであり、嬉しい。大人であっても子供以下の旅しか出来ない、或いはその旅すらも出来ない夫婦は無数におられる。経済的な理由からできないという方もおられるのだから、思い上がって旅の必要性をことさらに強調するつもりはないが、私は「旅は人を元気にする」という意味で、リタイア後の世代が、残された人生を活き活きと過ごすためにも、是非とも検討に値するテーマだと思っている。

松山在住のWさんとは、和田憲二郎、静のご夫妻である。くるま旅の大先達として、生き方の名人としてこれからもいろいろと教えを乞うてゆきたい。

(尚、和田さんは、来る1月4日()10:0011:00に放映予定のNHK番組に、お声だけだとかですが、生放送で出演予定とのことです。是非ともお聞き頂きたいと思います)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする