東京多摩借地借家人組合

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戦後の住宅政策の変遷と住生活基本法で学習会開催

2007年02月20日 | 借地借家人組合への入会と組合の活動
 東京多摩借組は、第8回目の「定例学習会」を2月17日午後1時30分から組合事務所において開催した。

 今回のテーマは、戦後の住宅政策の歴史、住生活基本法と東京都住宅マスタープラン(素案)の問題点、借地借家法改悪問題で、細谷事務局長がレジメと資料に基づき約1時間にわたり報告した。戦後日本の住宅政策がどのように変遷し、借地借家法の改悪につながっていくかを学習した。政府の基本計画は住宅関連産業の利益追求の場となり、公営住宅や住宅弱者切り捨ての中身が説明された。

 討論では、なぜ借地借家人など弱者を苛めようとするのかなど議論され、参加者の経験も活発に交流した。
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Q 消費者契約法はどのような契約に適用されるのですか。

2007年02月20日 | 消費者トラブルと消費者契約法
A ◎労働契約を除くすべての消費者契約に適用
 原則として、すべての消費者契約に適用されます。労働契約については適用がありません。では、「消費者契約」とは何でしょうか。消費者契約法2条3項は「消費者契約とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう」としています。つまり、消費者契約かどうかは、契約の内容ではなく、誰と誰がどのような立場で契約を結んだかによって決まります。このように、「消費者」「事業者」という契約主体に着目して制定されたところが、本法律の特徴です。

 ◎いろいろなケースが想定される
 市民が一般生活の上で結ぶ契約のほとんどは「消費者契約」であるといってよいでしょう。具体的には、賃貸借契約、売買契約、立替払い契約、保険契約、保証契約、継続的サービス取引契約などで問題になるケースが想定されていますが、消費者と事業者の間の契約であれば、その契約の種類、性質を問わず、いわゆる「消費生活」とは関連の薄い投機投資や不動産取引も消費者契約に含まれることになります。


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賃貸借契約における原状回復特約の消費者契約法による無効

2007年02月20日 | 最高裁と判例集
本件は、自然損耗および通常の使用による損耗についての原状回復を賃借人の負担とする特約を含む賃貸借契約が、消費者契約法施行後に更新された場合について、その特約が消費者契約法10条により無効とされ、敷金の全額返還が認められた事例である。(京都地方裁判所平成16年3月16日判決 一部認容 裁判所ホームページ「裁判例情報」掲載)



事件の概要
X:原告(賃借人、個人)
Y:被告(賃貸人、個人)

1 Xは、平成10年7月にYから共同住宅の一室を賃借して入居をした際に、敷金として20万円をYに預託した。この賃貸借契約においては、期間が同月1日から翌年6月までとされ、また月額賃料は、5万5000円とされた他、退去時の原状回復について、次のような特約がなされた。すなわち自然損耗および通常の使用による損耗についてXが原状回復義務を負担し、また敷金は、建物明け渡し時にXが賃貸借契約に関しYに対し負担する債務を控除した残額を建物明け渡し後45日以内に返還する、というものである。なお、当事者に争いがないところから、Yは、事業者であると目される。

2 この賃貸借契約は1年ごとに合意により更新された。直近の更新としては、消費者契約法が施行された平成13年4月1日のあとである同年7月7日に更新の合意がなされている。そののち賃貸借契約は翌14年6月9日に終了し、同日にXはYに建物を明け渡した。しかしYが、建物の原状回復費用として20万円を要したとして敷金全額の返還を拒否したところから、XがYに対し、敷金20万円全額の返還を求めて提起したのが、本件訴訟である。

 この事件においてYは、上記の原状回復特約に基づく原状回復費用を控除すると返還すべき敷金はないことなどを主張したが、裁判所は、この原状回復特約は消費者契約法10条に基づき無効であるとし、Yに対し敷金全額の返還を命じた。




理由
1 消費者契約法の適用の有無
 消費者契約法の施行後である平成13年7月7日に締結された本件契約合意によって、同月1日をもって改めて本件建物の賃貸借契約が成立したから、更新後の賃貸借契約には消費者契約法の適用がある。したがって、従前の契約どおりとされ、更新後の賃貸借契約の内容になっている本件原状回復特約にも同法の適用がある。

 実質的に考えても、契約の更新がされるのは賃貸借契約のような継続的契約であるが、契約が同法施行前に締結されている限り、更新により同法施行後にいくら契約関係が存続しても同法の適用がないとすることは、同法の適用を受けることになる事業者の不利益を考慮しても、同法の制定経緯および同法1条の規定する目的にかんがみて不合理である。

2 本件原状回復特約は消費者契約法10条により無効か否か
 賃借人が、賃貸借契約の締結に当たって、明け渡し時に負担しなければならない自然損耗等による原状回復費用を予想することは困難であり (したがって、本件のように賃料には原状回復費用は含まれないと定められていても、そうでない場合に比べて賃料がどの程度安いのか判断することは困難である)、この点において、賃借人は、賃貸借契約締結の意思決定に当たっての十分な情報を有していないといえる。本件のような集合住宅の賃貸借において、入居申込者は、賃貸人または管理会社の作成した賃貸借契約書の契約条項の変更を求めるような交渉力は有していないから、賃貸人の提示する契約条件をすべて承諾して契約を締結するか、あるいは契約しないかのどちらかの選択しかできないことは明らかである。

 これに対し、賃貸人は将来の自然損耗等による原状回復費用を予想することは可能であるから、これを賃料に含めて賃料額を決定し、あるいは賃貸借契約締結時に賃貸期間に応じて定額の原状回復費用を定め、その負担を契約条件とすることは可能であり、また、このような方法をとることによって、賃借人は、原状回複費用の高い安いを賃貸借契約締結の判断材料とすることができる。

 以上の点を総合考慮すれば、自然損耗等による原状回復費用を賃借人に負担させることは、契約締結に当たっての情報力および交渉力に劣る賃借人の利益を一方的に害するものといえる。ゆえに本件原状回復特約は消費者契約法10条により無効であると解するのが相当である。




解説
1 敷金は、賃借人の債務を担保するため賃借人が賃貸人に預託する金銭である。賃貸借契約に基づいて生ずる賃借人の債務としては、例えば賃料債務や、賃借人の落ち度による賃借物件の汚損などに伴う損害を賠償する債務が考えられる。これらの債務が退去時に残っていれば、債務額を控除した金額が賃借人に返される(債務額が敷金の額を超える場合には、敷金は返ってこないし、賃借人は、不足額を払わなければならない)。これに対し、賃借人の債務が何ら残っていない場合には、賃貸人は、敷金の全額を返還しなければならない。

2 一般に賃借物件の修繕は、賃借人の落ち度による汚損・破損の場合を除いては、賃貸人の義務であり、その費用も賃貸人が負担する。民法606条で定められている原則であり、これと異なる趣旨の特約を裁判所がそのまま有効と認めることもある。なぜなら賃借人の通常の使用に伴う損耗は、賃料に含まれていると考えられるからである。なお、どこまでが通常使用損耗であるかも、しばしば争われるが、それを超える損耗であることは、賃貸人の側が主張・立証するべきである(加藤新太郎「実践的要件事実論の基礎/敷金返還請求訴訟における要件事実」 『月刊司法書士』374号参照)。

3 具体的に考えられる場面としては、(1)特約が不動文字(注)で前もって印刷されていて賃借人に十分に説明されないまま契約書に入れられたものであるから無効であると考えられる場合(例文解釈)、(2)修繕を賃借人負担とする特約があるが、そこにいう修繕とは通常損耗を超えた汚損などに限られると考えられる場合(信義則に基づく特約文言の制限解釈、民法1条2項)、(3)修繕を賃借人負担とする特約が著しく不公正なものであるため無効であると考えるべき場合(公序良俗違反、民法90条)および(4)消費者の義務を加重してその利益を一方的に害するものとして無効であると考えられる場合(消費者契約法10条)などがある。

 この事件の賃貸借契約は、最初の成立が消費者契約法施行前であったが、更新の合意が施行以後であったことから、(4)に当たるものとして扱われた。敷金トラブルの解決に画期的な判決であるが、一般にはこの事件とは異なり、賃貸人が事業者であると一概にいうことができない場合もあり得ることから、(3)などにより解決すべき場面が残されている。




参考判例
 特約の解釈として原状回復の義務付けられた損害に自然損耗等が含まれないとされた事例として、川口簡易裁判所平成9年2月18日判決(消費者法ニュース32号80ページ)、大阪高等裁判所平成12年8月22日判決(判例タイムズ1067号209ページ)他多数。特優賃法および住宅金融公庫法の適用事例であるが、特約が公序良俗に反し無効とされた近時の事例として、大阪地方裁判所平成15年6月30日判決(判例集末登載)。

 本件とは異なり特約が有効であるとされた事例として、東京地方裁判所平成12年12月18日判決(判例時報1758号66ページ)。市営住宅についてであるが、通常の住宅使用による自然減価分が毎月の家賃に含まれているとはいえないと判示した事例として、名古屋簡易裁判所平成16年1月30日判決(最高裁ホームページ掲載)。

 なお、近時の判例の動向については、『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(改訂版)』(国土交通省住宅局・(財)不動産適正取引推進機構編(’04年2月発行))48ページ以下が詳しい。

注 不動文字 : 契約書等において、あらかじめ印刷された定型的な共通文言のこと


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