花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

今もいますよね

2022-05-03 11:21:52 | Book
 処世術に長けたと言うか、組織の中での生き残り術が上手いと言うか、そういう場面を時々見ることがありますが、今に限ったことではないようです。「渡辺崋山書簡集」(平凡社東洋文庫)を読んでいて、次のような記述に出会いました。江戸詰の崋山が飢饉に苦しむ国元の家老に、救荒にあたっての心構えを訴えた手紙の一部です。

(口語訳)
 自藩に重大な災難が起こった時に同じ役目の者たちが相談し合うと、まず月番が誰だったかとか、その上司の所見はどうかなどと言って責任を転嫁し、自分の意見はなかなか発言しません。たまたま軽率な者が何か一言発言すると、その者に責任を押し付けてごまかし、もしも事に失敗した場合には初めから良策ではなかったなどと言いふらした後に、自分の意見をとり混ぜて同役つぶしの発言をする者が世間には時々あるそうです。

(原文)
 一国大変の生ぜし時、同勤評議の間、先月番先御上席之御了簡などゝ推譲して容易に発言不致、偶麁忽なるもの一言を出せば其ものにゆづり、若し仕損候に及び始より良策にてはなかりしなどゝ、後にて己が了簡を取まぜ、同役つぶしを申もの世間に間々有之候よし。

 今もいますよね、こんな人。