「AERA」の孫崎さん、「マーケティングホライズン」の杉本さん、いずれの言葉も働く者、働こうとしている者を力づけるものと思うのですが、世の中にはそうではない人もいるように思えます。1月13日の朝日新聞朝刊には「マクド難民」の記事が出ていました。定職がなくお金もないのでネットカフェにすら泊まれず、マックの100円ハンバーガーで朝まで粘る人の記事です。そのような人は、「蒔かれた場所で花を咲かせる努力はできる」とか「助かりたいより助けたい」といった言葉に、何の感興も覚えないと思います。アブラハム・マズローの欲求5段階説では、「生理的欲求」→「安全の欲求」→「所属と愛の欲求」→「承認(尊重)の欲求」→「自己実現の欲求」と、人間の欲求はより高次なものへと移行していくとされています。「マクド難民」は「食べる」、「寝る」といった一番低い段階の「生理的欲求」が充分に満たされているとは言えず、仕事を通じて自分の価値を高めていこうとする「自己実現の欲求」に訴える言葉で、何ほどかの励ましを得ることはなさそうです。また、最近では自主退職を促すためにいじめとも思える処遇を与える「追い出し部屋」に関する記事も目にすることがあります。これなどは、「所属と愛の欲求」が奪われ、今にも「生理的欲求」や「安全の欲求」の危機に陥りそうな人の存在を浮き上がらせています。孫崎さん、杉本さんの言葉を「いい言葉だ」と思える幸せな人と、根源的で切実な欲求が満たされない不幸な人の間のギャップに、今、日本が大きく切り裂かれつつあると感じます。