花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

聖像破壊令

2010-12-08 22:52:25 | Book
 高校生の頃、世界史で聖像破壊令について習ったことをかすかに覚えていましたが、ほとんど薄れかかっていたその記憶を、ジュディス・ヘリン著の「ビザンツ 驚くべき中世帝国」(白水社刊)が呼び覚ましてくれました。まったく頼りない私の記憶では、聖像破壊令とは、ビザンツ帝国(東ローマ帝国)でキリスト教の教義に関わる対立から発せられ、キリストの絵や像、つまり偶像を崇拝してはいけないとしたものだったと思います。受験勉強でかなり役に立った山川出版社の「世界史小辞典」がまだ手元に残っているので、念のため聖像破壊令の項を開いてみると、こう書いてありました。「726年東ローマ帝国レオン3世が発布した勅令。キリスト教信仰の純粋性を保とうする宗教的意図のほかに、政治的・社会的問題が関連し、聖像論争が起こる。780年の聖像崇拝復活をはさんで、843年の正統信仰復活までつづいた。」
 ところで、「ビザンツ 驚くべき中世帝国」を読んで、どうしてまた聖像破壊令のことを思い出したかですが、この本ではレオン3世が聖像破壊令を出すことになったきっかけとして、イスラム勢力の影響を挙げていて、「へぇー、そんな理由があったんだ」と新鮮に思ったからです。山川の辞典にもあるように宗教的な理由からだと思っていたのですが、ジュディス・ヘリン女史によると、当時、ビザンツ帝国はイスラムからじわじわと圧力を受ける中で劣勢を強いられ、イコンに頼れば当然あると思っていた神の加護もなく、レオン3世は「偶像崇拝を禁じるイスラム教の方が神の意志に適っているのではないか」と思います。そこで、聖像破壊令を出したと書いてあります。
 高校で世界史を勉強していた時は、ヨーロッパに対して侵略してくるイスラム勢力という歴史記述が多かったように思いますが、武力衝突の歴史ではなく、キリスト教やヨーロッパの文化がイスラムの影響をどう受けたかに関する歴史書があれば、読んでみたいと思いました。