花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

内側へ行った人は何を思う

2009-08-10 00:16:53 | Weblog
 「彼はどの顔を見ても羨ましかった。」これは夏目漱石の「門」に出てくる一節です。親友に対して犯したかつての罪に罪悪感を持ち続ける主人公が、気を紛らせようと寄席に出かけます。けれども、寄席でも気は晴れず、かえって出し物を心から楽しんでいるらしいあたりの人たちを羨むことになります。主人公にとっては、あたりの人に屈託のないことが羨望の理由となっています。私は、のりぴー逮捕のニュースを見て、なぜか夏目漱石のこの文章が頭に浮かびました。トップアイドルとして君臨していたのりぴーが就縛の徒となった今、いったいどんな気持ちでいるかと考えた時、「彼はどの顔を見ても羨ましかった」という漱石の文章が思い出されました。高校野球をテレビ観戦したり、プールへ行ったり、冷し中華を食べたり、ビールを飲んだり、そして薬といえばオロナインしか使ったことのない有名でもなんでもない普通の人のことを、羨ましいと思ったりする瞬間はあるでしょうか。それとも、「ツイてなかったなぁ」と思っているのでしょうか。もし、自分がのりぴーの裁判の裁判員だったら、「門」のこのくだりについての感想を訊いてみたい気がします。