「アメリカン・コミュニティ」に描かれているのが、緩衝材あるいは防波堤の内側にいる人たちだとすれば、堤未果氏の「ルポ 貧困大国アメリカ」(岩波新書)は大きな波に抗う術を持たず、国家や企業に食い物にされている人々を取材したものです。トルストイの名言に、「幸福な家庭はみな同じだが、不幸な家庭はそれぞれである」といったものがあったように思いますが、貧困大国アメリカではちょうど逆です。堤氏の本に出てくる貧困者は同じ道筋を辿ります。例えば次のような。貧しくて医療保険に加入出来ない→病を得る→借金を抱える(NYでは盲腸の手術に250万円も掛かるとか)→食えなくなる→食べるために軍隊に入る→イラクへ派兵、とまぁこんな具合です。食えなくなる理由は、大学の学資ローンの支払いが出来なくなったり、家が貧しくて十分な教育が受けられず就職出来なかったり、リストラされたりといろいろありますが、その先で待っているのは食うために最後に残された選択肢である軍への入隊です。いや、他に選ぶ途がないので選択肢とは言えないかもしれません。堤氏は「いのち」、「くらし」、「教育」などの生活の根幹に関わることを、市場原理に委ねてはいけないと訴えています。しかし、アメリカではその根幹の部分を市場原理に委ね、その結果「いのち」、「くらし」、「教育」の分野へ進出しそこで儲けを出そうとする企業がサービスを受けるための対価を跳ね上げ、その支払いに耐えられず貧困層へ滑り落ちる人たちを生み出しています。そして、貧困者を生み出す市場原理が追い討ちを掛けるかのように、貧困者をさらなる食い物としていきます。イラクへ貧困者を送り込むのは軍だけではなく、民間の人材派遣会社も貧困者をリクルートして低賃金でイラクへ送り、巨利を得ていると知り驚きました。
「アメリカン・コミュニティ」、「ルポ 貧困大国アメリカ」で取り上げられている流れに対して、現ブッシュ政権は棹をさす役割を果たしてきたと思います。もちろんこの2冊で語られていることがアメリカの全てではないでしょう。でも、それはほんの一部の極端な例でしょうか、それともアメリカ社会で看過できない規模をもって進行していることなのでしょうか。その意味で、今度の大統領選で国民がどのような選択をするか興味があります。先ずは、スーパー・チューズデー。その結果や如何に。
「アメリカン・コミュニティ」、「ルポ 貧困大国アメリカ」で取り上げられている流れに対して、現ブッシュ政権は棹をさす役割を果たしてきたと思います。もちろんこの2冊で語られていることがアメリカの全てではないでしょう。でも、それはほんの一部の極端な例でしょうか、それともアメリカ社会で看過できない規模をもって進行していることなのでしょうか。その意味で、今度の大統領選で国民がどのような選択をするか興味があります。先ずは、スーパー・チューズデー。その結果や如何に。