shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

旅荘カリフォルニア / 掟破り軍団, 見良津健雄 & おたっしゃCLUB

2010-11-27 | Cover Songs
 “パンクでジブリ” 、 “メタルで演歌” に続くシリーズ第3弾の今日は “ロックでフォーク(?)” である。この手のパロディー盤は、まずアーティストとしてのプライドを捨てて(笑)、どこまでオバカに徹して笑わせてくれるかが成否を分けると思うのだが、この「旅荘カリフォルニア」はそのアホらしさにおいて群を抜いており、その筋系のマニアにはこたえられないアルバムになっている。
 内容は “日本の70年代フォークと洋楽ロックの融合” という無謀なもので、演奏もめちゃくちゃチープでショボイのだが、何よりもその選曲合体センスが抜群なので細かいことはあまり気にならない。コレは真剣に演奏を聴くアルバムではなく、そのアイデアで笑わせてもらうアルバムなのだ。私としては前回の「演歌メタル」は邦楽サイドに知らない曲が多くて忸怩たる思いだったが、今回はリアルタイムで聴いてきた曲がほとんどなので全曲知っている(^_^) 素材として使われている曲は以下の通りだ;
 ①「夢の中へ」(井上陽水)+「ハイウェイ・スター」(ディープ・パープル)
 ②「22才の別れ」(風)+「ブラック・ナイト」(ディープ・パープル)
 ③「旅の宿」(吉田拓郎)+「スモーク・オン・ザ・ウォーター」(ディープ・パープル)
 ④「夏休み」(吉田拓郎)+「サマータイム・ブルース」(ザ・フー)
 ⑤「結婚しようよ」(吉田拓郎)+「ロング・トレイン・ランニン」(ドゥービー・ブラザーズ)
 ⑥「いちご白書をもう一度」(バンバン)+「呪われた夜」(イーグルス)
 ⑦「神田川」(かぐや姫)+「天国への階段」(レッド・ゼッペリン)
 ⑧「赤ちょうちん」(かぐや姫)+「いとしのレイラ」(デレク&ザ・ドミノス)
 ⑨「走れコータロー」(ソルティー・シュガー)+「アメリカン・バンド」(グランド・ファンク・レイルロード)
 ⑩「太陽がくれた季節」(青い三角定規)+「ヴィーナス」(ショッキング・ブルー)
 ⑪「精霊流し」(グレープ)+「朝日のあたる家」(アニマルズ)
 う~ん、好奇心をビンビン刺激するラインナップである。どれを取っても面白そうだが、中でも一番笑わせてくれたのが⑦⑧のかぐや姫ナンバーだ。およそロックとは縁のなさそうなこの2曲をロックの権化みたいなゼッペリンやクラプトンの曲と合体させようなんて一体どこの誰が考えたのだろう?しかも⑦⑧共に水と油のような2曲が分離不可能なぐらい見事に溶け合っており、アレンジャーの音楽的センスに脱帽させられる。コレはもう実際に聴いて大笑いするしかないだろう。特に⑦の後半部の盛り上がりはゼッペリンのオリジナルを知っている者にとっては抱腹絶倒の展開だし、⑧も “レイラァ~♪” の代わりに “赤ちょーちん!” と叫ぶところなんかもう最高だ。エンディングでクリームの「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」のリフを入れる遊び心も素晴らしい。
 伊勢正三とディープ・パープルという、ある意味対極に位置するような2曲を見事に合体させた②も素晴らしい。私は正直言って軟弱な “四畳半フォーク” はあまり好きではないのだが、この曲は実にキレイなメロディーを持った名曲中の名曲だと思うし、ヴォーカルを担当しているのが元横浜銀蝿の翔ということもあって、彼のドスの効いたヤクザなヴォーカルが良い意味で曲にザラつき感を与えている。特にイントロから “あ~なたにぃ~♪” とヴォーカルが滑り込んでくる瞬間がたまらない。イエスの「ロンリー・ハート」の出来損ないみたいなシンセはご愛敬...(^_^)
 ③④⑤の拓郎ナンバーもエエ感じ。十把一からげにフォークに分類されてはいるが、他と違って拓郎の曲にはロック・スピリットが宿っており、そのせいか何の違和感もなくロックの名曲と融合しているように思う。特に翔のヴォーカルが映える③は出色の出来で、例のリフも実に効果的に使われている。ただ、④の演歌歌手みたいな女性ヴォーカルはコブシが効きすぎてて曲とミスマッチに聞こえるし(←まぁコレはコレで印象に残るので意図的にこうしたのかも...)、⑤は間奏のブルースハープ(←ハーモニカみたいなヤツね...)が無いと「ロング・トレイン・ランニン」にならないように思う。
 ⑥はイーグルスということで、本当は知名度抜群の「ホテル・カリフォルニア」を使いたかったのだろうが、あのイントロから「いちご白書」へ持っていくのはかなり無理がある。しかしパロジャケのこともあるし、どうしても「ホテ・カリ」を使いたかったのだろう、後半部分で取って付けたように例のギター・ソロが登場するのには大笑い。この何でもアリのアホらしさがエエんよね。⑨のグランド・ファンク・レイルロードはブリティッシュ・ロック勢に比べると日本での人気はイマイチかもしれないが、ポクポクポクと木魚のような音を立てるカウベルの使用で原曲の雰囲気を巧く再現していて結構楽しめた。
 逆に期待ハズレだったのが①だ。ハードロックの定番中の定番「ハイウェイ・スター」(←しかもご丁寧に Live In Japan ヴァージョンときたモンだ!)のイントロに続いて “探しものは何ですか~♪” って凄く良いアイデアだとは思うが、実際に聴いてみるとヴォーカリストがハイトーンを絞り出すのに苦しそうで聴いてるこっちまで息苦しくなってしまう。改めてイアン・ギランの偉大さを痛感させられる1曲だ。⑩は可もなく不可もなしという感じ。⑪に関しては、私はさだまさしが生理的に無理なのでパス。このヴォーカリストも何か気持ち悪い歌い方だ。
 ひなびた和風旅館をフィーチャーし、タイトル文字の青いネオンサイン(←“旅荘”の字体がアルファベットみたいに見えます...)にまで拘ったジャケットは言わずもがなの「ホテル・カリフォルニア」のパロジャケになっており、これでもかとばかりに笑わせてくれる。70年代の洋楽邦楽を聴いて育った世代に向けて遊び心満載で作り上げられたこのアルバム、まさに笑撃のケッサクと言えるだろう。

ステァウェイトゥ神田川


レイラとレイコで赤ちょうちん


22才のブラックナイト


スモークオンザ旅の宿


呪われたいちご白書
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