shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ビトゥイーン・ザ・デヴィル・アンド・ザ・ディープ・ブルー・シー / ジョージ・ハリスン

2010-11-29 | Standard Songs
 この「Between The Devil And The Deep Blue Sea」という曲は1931年にハロルド・アーレンによって書かれ、1935年にヘレン・ウォードをフィーチャーしたベニー・グッドマン楽団のレコードでヒットし、その後は主にジャズ・シンガーによって歌われてきた古いスタンダード・ナンバーだ。浮気が発覚した相手と別れたいが未練があって別れられない、どうしたらいいの???、という内容の歌で、タイトルは日本で言えば “前門の悪魔、後門の深海” みたいなニュアンスだろう。要するに “どっちへ転んでもやっかいなことになる” ということで、邦題は「絶体絶命」となっている。アップテンポでスインギーに歌われることが多く、ヘレン・ウォードを始め、アニー・ロス、ブロッサム・ディアリー、ペギー・リー、ジョニ・ジェイムズ、リー・ワイリー、ヘレン・フォレストなど、私の大好きな女性ヴォーカリスト達がこぞって取り上げている我が愛聴曲だ。

①George Harrison
 長年音楽を聴いていると “エッ、この人がこんな曲をカヴァーしてるの?!” と驚かされることが時々ある。ジョージの遺作「ブレインウォッシュト」のトラックリストの中にこの曲の名を見つけた時は本当にビックリした。元ビートルズのメンバーがアメリカの古いジャズ・スタンダード・ナンバーを? ビートルズとジャズというのは一見あまり接点が無いように思えるのだが、よくよく考えてみるとジョージはアルバム「33&1/3」の中でコール・ポーターの「トゥルー・ラヴ」を、「サムウェア・イン・イングランド」でもホーギー・カーマイケルの「ボルチモア・オリオール」をカヴァーするぐらいアメリカン・スタンダード・ナンバーにも造詣が深い。そういう意味ではこの選曲も何となく合点がいく。
 で、実際に聴いてみるとコレがもう実に肩の力の抜けた名演で、参加しているミュージシャンみんなが心から楽しんでいる様子がヒシヒシと伝わってきて “音楽っていいモンやなぁ~(^.^)” と思わせてくれるのだ。 PV の映像で実にリラックスした表情で楽しそうにこの曲を歌っているジョージを見た時は思わずジーンときてしまった。愛用のウクレレを弾きながらこの曲を慈しむように歌うジョージ... ここで見れるのは元ビートルズというよりも、人生の晩年を迎えて純粋に音楽を楽しむ達観の境地に達したかのような一人のミュージシャンとしての姿である。病魔に蝕まれた身体で枯淡な味わいのヴォーカルを聞かせる様は感動的だ。
 若くして不世出のロックバンドの一員として世界制覇を成し遂げ、ジョンとポールという二人の天才の陰に隠れながらもコツコツと独自のスタイルを築き上げて晩成し、ソロになってからはその滋味溢れるプレイでファンを魅了し続けたジョージ。私はそんな彼がたまらなく好きだ。
Between The Devil And The Deep Blue Sea


②Helen Ward with Benny Goodman Orchestra
 ヘレン・ウォードは1930年代にベニー・グッドマン楽団のバンド・シンガーとして一世を風靡した人気歌手。独特な節回しでスイングする彼女の歌声は録音から70年以上経った今でも瑞々しく響く。
ヘレン・ウォード


③Annie Ross
 アニー・ロスは後年の姉御肌のヴォーカル・スタイルも捨てがたいが、私にとってはこの初レコで聞ける蕩けるような歌声がベスト。22才にして既に貫禄が備わっており、ジャジーなくずしの妙味も聞き物だ。
アニーロス


④Modern Jazz Quartet
 ③のセッションでアニー・ロスのバックを務めていた MJQ (ピアノはブロッサム・ディアリーだったが...)はこの曲を2度レコーディングしている。私は端正なアトランティック盤(57年)よりも親しみやすいこのサヴォイ盤(51年)のヴァージョンが好きだ。
MJQ


⑤Bing Crosby
この曲は圧倒的に女性ヴォーカルが多いが、男性ヴォーカルではこのビング・クロスビーのヴァージョンがいい。あくまでも軽やかに、そして粋にスイングするホワイト・クリスマスな歌声は唯一無比だ。
Bing Crosby - Between The Devil And The Deep Blue Sea -

この記事についてブログを書く
« 旅荘カリフォルニア / 掟破り... | トップ | Rockaway Beach Boys / Ramouns »