津々堂のたわごと日録

爺様のたわごとは果たして世の中で通用するのか?

正保四年ポルトガル船長崎に来航-- 1

2010-06-08 16:53:08 | 歴史
 現在正保四年の「ポルトガル船来朝記」を読んでいる。約40ページの文書だが、読みながらタイピングするという作業を、延べ一週間ほど続けてきた。相変らず綿考輯録の該当項を見たり、地図や関係資料を見たりしながらの作業で手間取りながらも、どうやら残り2ページほどに成った。あとは参加した主だった人たちの名前が並ぶだけで、読下しの苦労も無くゴールは目の前である。この文書は現地の状況の報告であり、事件の全貌が見えないが、綿考輯録は「或覚書ニ」として、実に要領よくこの事件の概要をまとめている。ニ回ほどに分けてご紹介する。

 ここでの出色は長岡監物の発案による海上封鎖作戦である。長崎の瀬戸口約400余メートルに船橋を設置し、結果この作戦がこの騒動を解決に導いた。

比は正保四年亥六月上旬、南蛮国よりかりあんとか申切支丹之大船長崎の湊に入津仕、自今已後商売舟日本渡海の御詫言申上候願之旨を申上る、御政所馬場三郎左衛門様より江戸江可有言上候、暫ク相待候へと御答、九州二嶋江早速人数を被指出、邪船弐艘不計帰帆不仕様ニ可有覚悟、御誅伐有なしの儀ハ江戸より可為御下知次第との御飛脚七月四日未明ニ到着す、光尚公御在江戸之御事なれハ長岡式部殿ニ御一門細川左京殿・細川刑部殿、御家老中・御備頭衆御寄合ニて即日未之上刻長岡勘解由手勢三百余ニ而熊本押出す、直組・下組諸者頭彼而の面々段々はせ追、同日亥の刻河尻ニ至る、同子之刻乗船、軍勢都合五千程とかや、二蕃貝ニ纜をとく、三番貝に押出す、折節追手の北風吹しほりけれは、同六日の晩景に長崎の湊に着舟す、諸国之船共はともづけニ懸る、御国船ハみたれ懸りにする、船数かそえられすとかや、元より鍋嶋信濃守様御当番御請持成れハ、御家老鍋島七左衛門はからひとして、深堀のせば戸八丁の所を弐尺廻りのと綱を以、東西の岸の松に碇からみ付、所々に大木のうけをつけ、敵船をさへきりとめんとの支度也、扨二蕃手長岡監物殿六千の人数を引卒して同七日ニ長崎江着船し給ふ、と其儘麻上下を着し、唯今到着仕候、奉窺御機嫌とや、三郎左衛門様早速御対面残暑甚候ニ堅固ニ早ク到着、御出歓入候、監物殿参上を御聞被成候と其儘諸国参陳之家老衆へ急報ニ被参候へと御呼使参る、何も早速参上御対面、誅伐可仕旨之上意下るとひとしく打果候手立、且又其内与風敵船出船可仕と押へ申ハと綱ニて弥丈夫ニ候哉、累年之被仰付と違背したる敵国候ハゝ、公義の御為大事之儀ニ候間、各存寄心底を不残委細ニ可被申と也、何も詞を出さす、ぎしとして被居ける

御政所被仰候は、監物殿事岐阜・関ヶ原・大坂夜討、同五月六日七日之防戦数度之分骨他ニ異して、第一名将忠興公ニ馳被申候へは卑下もならぬ事、若取逃し候てハ日域末代のかきんたり、上様之御為なれハ武略を尽されよと也、監物畏て人ケ間敷御諚の上は、愚存之趣可申上候、火急之儀ニ付手と綱之儀尤之儀ニ御座候(瀬戸口に大縄を渡すという事) 乍然邪船押而帰帆候はと綱幾筋御はらせ被成候共、乗沈め可申候、若船底ニさわり候ハゝ、船具を仕候刃物を以切はなち罷通り可申候、船橋を被仰付可然と也、御政所仰ニ、八丁之所を日数かけば可取切候得共、取切と見て被取籠、叶ハしと乗出し候ハゝ、手を可失と也、いや只肥後守一手二被仰付候へ、今夜不明内ニ取切り候而可懸御目候と也、材木ハいかに監物抑さへ被付候へは出来可仕候、若材木不便ニ候ハ、当所之町を取こハし、船橋出来之上ニてはや明日より前ニ不劣様ニ作事仕らせ遣可申と也、しからハ監物殿裁判次第、然共八丁を皆迄と申も余也、四丁を肥後殿御手へ、残る四丁を諸手二而懸渡され候へと也、御諚畏候とて各退出、監物元船に帰座有て渡辺作之允と申かせたる石火矢を呼、其方儀今夜中に四丁の所に舟橋を懸渡す材木・釘・かすかい諸具つかへざる様に心いつはひニ可相渡しと也、渡辺も誠に不存儀なれハ、あきれはて忙然たり、雖然夏の短夜不明内に四丁をかけ渡す、急用なれハ渡辺なに/\わたせ/\請取へしと諸手へさゝ波の磯のまさごをうつ風情、作之允船々ニ材木夫々の品々を材木ニくゝりつけ、帆柱所二立置而、てんでニ手柄次第とらしませよとよはわる、聞伝へ/\渡辺ニ届る迄もなくはひとりのことし、数万の材木・貫・平物・かすかい・縄以下おつとり/\懸わたす、猶其上に三階の矢くらを三ヶ所ニあげ、塀・板はりの所大杉原を以てはりたて候へハ白かべのことし、石火矢さま切てあれは、石火矢・大筒数十挺しかけける、当御手ハ不及申、残る四丁も諸手より夜の中にかけ仕廻ぬ、夜明けれは見物の諸万人群集してわたりとやめく、橋の上ニ幾所ともなく臼を持出、米をうつ、都五条ノ橋の上もかくやとみえてにきやか也
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