現在政府が運用するAUV「うらしま」
政府は、水深7000メートルまでの海底を探索できる自律型無人探査機(AUV)の開発に着手する方針を固めた。完成すれば、日本の排他的経済水域(EEZ)の98%が探索できるようになり、地震研究や海底資源の調査が大きく進展する。将来的には安全保障分野でも活用する考えだ。
新たに開発するAUVは全長10・5メートル、幅1・3メートル、高さ1・5メートル。潜水できる最大深度として、日本海溝の最深部と同じ8000メートルを目標に設定する。1回で約110キロ・メートル、24時間の航行を目指す。
現在政府が運用するAUV「うらしま」を基礎に、水圧に耐える性能などを向上させ、数年以内に実用化する方針だ。2022年度第2次補正予算案に関連経費を盛り込む。
自動で航行するAUVは、操作が不要であるため、安全かつ省エネルギーでの調査が可能だ。海上の船舶とつなぐケーブルが必要なく、広範囲で稼働できる利点もある。
新型AUVを投入することで、海底の断層の活動履歴を調べ、地震や津波の研究に役立たせたい考えだ。高周波の音波を使い、高い精度の海底地形図を作ることも可能になる。
EEZの深海底部分には、ハイテク製品に欠かせないレアアース(希土類)が泥状になって存在する。海底資源を広範囲で探査し、経済安全保障上、重要な鉱物資源の確保も見込む。将来的には、複数のAUVの同時運用や、海底に充電設備を設置することで長時間の航行も視野に入れている。
現在、政府が運用するAUVの最大深度は、「AUV―NEXT」の水深4000メートル。世界6位の面積を持つ日本のEEZは、水深4000メートルを超える海底が約50%を占め、深海域を調査する際の基礎となる海底地形図の作成などは手つかずのままとなっている。
一方、米国や英国はすでに水深6000メートル級のAUVを所有する。中国は近年、日本のEEZ内で無許可の海中調査を活発化させ、AUVの深度が7000メートルに到達したと発表している。経済安全保障の観点からも諸外国並みの性能を持つ国産のAUVの開発が急務となっている。
@安全保障や海底資源の探査がスムーズに行えるよう、そして最深部の日本海溝8000mをクリアする、水深10000m潜航可能なAUVを開発してください。