転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



昨年度の通訳案内士試験受験の際、「日本地理」の対策のために使った、
「都道府県別地図帳」を広げて、先日、改めて福島県を見ていたら、
太平洋岸に『原発銀座』という記述があったので、胸をつかれた。
ここにそのような名前が書かれていたことを、私はすっかり忘れていた。

地図帳だから、どこの県のページを見ても、
主立った山脈や平野、湖、主要な観光地などの名称が載っていて、
福島も阿武隈高地、阿武隈川、磐梯山、猪苗代湖、会津盆地、福島盆地、
等々の有名な箇所が掲載されており、私はいずれにも○印をつけたり、
簡単な説明を書き加えたりしてチェックした跡が残っているのだが、
『原発銀座』のところには、何も書き入れていなかった。
この箇所は少なくとも昨年夏までの時期には、全くと言ってよいほど、
私の関心を引いていなかったということだ。

昨今では連日のニュースでたびたび耳にするようになった、
南相馬市、双葉町、富岡町、などの場所にまたがる海岸線沿いに、
この『原発銀座』の文字は、印刷されていた。
ここに、第一・第二の両発電所を合わせて十基もの原子炉が並んでいたことの意味を、
私は昨年まで、ほとんど考えたことがなかったのだ。
ちなみにこの地図帳では、扱っているのは原則的に地形に関する情報であって、
新潟や福井など、ある程度の数の原発が集まっている場所にさえ、
発電所に関する記載も名称も全く出ていない。
福島にだけ、原発のことが特別に書かれているのだ。

各種の「あやかり銀座」はあちこちに見られ、
どこも、人の多く集まる賑やかな場所の名前として親しまれている。
それらの大半は繁華街や商店街だ。
しかし、特異的なほど原子力発電所が多く建てられたための『原発銀座』とは、
今となっては、なんという皮肉な名称なのだろう。
原発のあるがゆえに街の栄えることを願った、
地元の方々の思いは真実であり、切実なものであったと思うし、
ここから提供された電力のお陰で、地元ではなく首都圏が、
快適な生活を享受できたことも事実だった。
そして今や福島第一原発は、原発事故の現場として世界中に知られる場所となった。
『原発銀座』の名を、そもそもの由来とは全く別の意味で、
私はもう二度と、忘れることはないと思った。

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