転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



ポール・スタンレーは右耳が聞こえない、
という話は以前から知っていた。
多分、そのためではないかと思うが、インタビューなどの際には、
大抵、メンバーの誰かが、彼の左耳の側にいる。
特に、ジーンとポールの二人が並んで取材を受けるときは、
向かって右がジーン、左がポール、という配置がほとんどだ。
屋外での騒々しい場所でのインタビューのとき、
記者の質問をジーンがさりげなくポールに教えている映像も
以前、見たことがあった。

とは言え、普通の環境では取材その他に何の問題もないし、
それどころかポールは大変に雄弁で隙のないフロントマンだ。
記者の質問に絶妙な切り返しで答え、会場を湧かせ、
回転の速さもテンポの良さも、メンバー随一だ。
説明されなければ、誰も全く何も気がつかないだろう。
右側が聞こえないのは先天的なことなので、彼自身は、
音楽を聴く際にも作る際にも、特に不自由はないのだそうだ。
骨伝導を使えば右耳でも聞くことは不可能ではないが、
幼い頃から音はそのような聞こえ方をしていないので、
両耳で音楽を聴くとかえって混乱する、とも語っていた。

4年くらい前に出たKISSの公式バイオグラフィにも
こうした、彼の耳の事情については書かれていたし、
もっと以前から、ほかの場所でも活字になっていたことなので、
私はそれ以上、殊更注目したことはなかったのだが、
それが、先天性小耳症のためだったというのを、
私はごく最近になって、ネットの記事を読んでいて知った。
それで、まったく今更なのだが、
彼がAboutFaceの活動に力を入れる理由が、初めて理解できた。

AboutFaceは、顔面等、外見に疾患・外傷のある人、および、
その家族を支援し、情報・教育・カウンセリングなどを提供する、
トロントに本部を置く、北米の団体だ。
ポールは以前から、そこのスポークスマンとして活動をしている。
私は、実に失礼なことながら、最初は、彼のこの活動を、
一定の地位を得た欧米人がよくやる慈善事業、
のようなイメージで捉えていた。
特にアメリカの富豪はフィランソロピーをやりたがる、
という、先入観というか偏見に近いものが、私には、あった。
今にして思えば、本当に無理解で、申し訳ないことだった。

そのポール・スタンレーが、AboutFaceについて語る、
30分のインタビュー番組が、12月28日にCelebrity Soapbox
(ichannel)で配信されるそうだ。

Paul Stanley@Celebrity Soapbox(YouTube)

好奇の目で見られることが、小さい子や若い人にとって
どれほど過酷でつらいことであるか、
こうした現実を変えていくために最も良い方法は、
世の中を「啓発する」ことだとポールは語っている。
そして、自分に何か貢献できることがあるというのは
自分自身をも癒やすことに繋がっている、と。

そう考えてみると、99年に『オペラ座の怪人』で
ファントム役を演じたことは、ポールにとっては、
単にミュージカルへの挑戦という以上に大きな意味があったのだ。
ファントムは、そのあまりに特異な顔貌ゆえに人生を見失い、
それでもクリスティーヌの愛を得ようと苦悩した人物だったからだ。
そこには、少年時代に耳のことで悩んだ彼自身の思いが、
かたちは違っても、確実に投影されていただろうと思うのだ。

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・・・という、イイ話のあとにアレなのだが、
Celebrity Soapbox関係の映像を検索している途中で、
NHK『英語でしゃべらナイト』の取材を受けて田村英里子と遊ぶ、
ジーン・シモンズ&ポール・スタンレー(2006年)を見つけた。
まったく、こんな日本語を、誰が教えたのだ(苦笑)。
KISS GENE and PAUL(YouTube)

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