転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



ゾラン・ヤコブチッチというヴァイオリニストが、
エリザベト音楽大学ザビエル・ホールで演奏会をするというので、
夜7時から聴きに行った。

余談だが、エリザベト音大と世界平和記念聖堂と幟中学は、
私にとって、幾度も行っているのに行くたびに道に迷うという、
いわば、魔のトライアングル、広島のバミューダだ。
きょうも聖母幼稚園の脇まで来ながら途方にくれてしまった。
と、そこに、花束を持った男性が通りかかったので、
『おお!!!こいつは客だ!!違いない!!』
と色めき立って尾行したのだが(違)、その人は、
同じエリザベト音大でもセシリア・ホールのほうに行く人で、
私は彼に従ったせいで一旦、違う会場に入ってしまった(--#)。

さて名前からわかる通り、ヤコブチッチはクロアチア出身だ
(クロアチアのクは100メートル先からでも聞き逃さない私(嘘))。
だが東欧出身でも、この人はシンシナティ大学で学んだ後、
ジュリアードでドロシー・ディレイの薫陶を受けたという、
ほとんどアメリカの演奏家に等しい経歴を持っている。
果たして、ステージに現れた彼は、いかにもアメリカ人!
という雰囲気の演奏家だった。

プログラムは、ベートーヴェンのソナタ第5番『春』と、
バッハ『無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番』
それにブラームスのソナタ第1番『雨の歌』
ピアノは桐朋出身の米田栄子氏(彼女がまたとても良かった。
室内楽のプロフェッショナル、という味わいの演奏で余裕があり、
ソリストとの呼吸の合わせ方や駆け引きも素晴らしかった)。

ヤコブチッチのヴァイオリンは、艶やかな音色で、
そのうえどこか溌剌とした陽気さがあって、
特にベートーヴェンでそれがよく活かされていたと思う。
バッハはシャコンヌだけでなく全曲版で、まさに入魂の演奏。
この二曲のあと、休憩を挟んでブラームスだったのだが、
この順に並べられると、実に多彩で、
聴き応えのある構成だなと、実際に聴いてみてよくわかった。

そしてアンコールはクライスラー『美しきロスマリン』
小品ながらこれもなかなかに良かった。
昔、十代だった頃のヴァディム・レーピンが、
この曲をあまりにも敏捷に軽々と弾いてしまったことがあって、
私は、その演奏を見事だと思いながらも物足りなかった。
きょうのヤコブチッチはその点、大人のクライスラーだった。
良い意味での勿体つけた演奏で、充分に旋律を歌わせていて、
その味わいがとても私好みで嬉しかった。

素晴らしい演奏内容と意欲的な曲目に比して、
客層のほうは、結構、初心者が多かったようだった。
ベートーヴェンの一楽章が終わったところで拍手が起き、
私は内心、『あちゃ~(^^ゞ』と思ったが、
ヤコブチッチは余裕の微笑でそれをかわして二楽章に移った。
さすがに12歳からプロで弾いている人は違うのだった(^_^;)。

あと、演奏とは関係ないが会場が暑かったのには閉口した。
とくにザビエル・ホールの客席は講堂のように段差のないつくりで、
人と人に挟まれた席にいると、熱気で死にそうだった。
それで私は休憩時に席を立ち(自由席だったので)、
後ろのほうで空いた席を探して移動したのだが、
I列から後ろが一段高くなっていて、
I列の通路沿いは視界が遮られず空気が綺麗で(^_^;)、
このあたりがベストの席だったかと初めて知った。

次回からこの教訓を生かそう。
っていうか、次回があったら今度こそ道に迷わず早く来なければ。

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