「逆ねじ」と「両ねじ」の話。

2020-12-18 22:05:15 | Weblog

このコロナの世相とも関係ないし、

音楽とも文学ともアートとも関係ない、「ねじ」の話をするね。

 

えーっと、トラックとかの、進行方向左側の、

タイヤのホイールについてる、タイヤ取り付けのための「ナット」って、

「逆ねじ」になっているのだ。

 

「逆ねじ」?????

 

普通、というか世間に流通しているほとんどのボルトとナットは、

右側に回したら締まる、左側に回したら緩む、ということになっている。

これは統一されてるのだ。そうでないと、ややこしくて仕様がないから。

右に回せば締まる、のが言わば「順ねじ」である。

でも

トラックの左側だけ、それが逆になっていて、

左側に回したら締まる、右に回したら緩む、というふうになっている。

これが「逆ねじ」。

何故そうなっているのか???はきっとちゃんと、理由があるのであろう。

恐らく・・・左側のタイヤはずっと左向きに回転しているから、その動きで、ナットが緩む・・・・

のかもしれない。っていうか、きっとそうなのであろう。それしか考えられない。

同じトラックでも、進行方向右側のタイヤ取り付けナットはちゃんと、「順ねじ」だ。

 

しかし「逆ねじ」を制作するのは実は、厄介な作業なのだ。

鋳型から「逆」のものを制作せねばならない。まあ、大量生産するんだからどうってことないかもだけど。

 

このことは、自動車整備士の間では「そんなの常識」である。

エジソンは偉い人、というように、キオスクは駅の中、というように。

タッタタラリラ、というように。

 

トラックのタイヤ取り付けナットは直径10センチ近くもある巨大なものだ。

文鎮に使えそう。ずしっと重い。

 

 

 

 

 

 

次は、ぐっと小さくなって、ねじ頭の直径が1.5ミリくらいの、

高額腕時計の、ブレスレットの、っていうかつまり金属ベルトの接続部のねじ。

 

普通の金属ベルトの接続部は「割りピン」という特別な棒で接続されている。

 

時計の金属ベルトの長さを調整するときは普通、この「割りピン」を

専用の工具で叩いて外して、また叩いて取り付ける。

 

これが高額時計になると、調整できる接続部が「ねじ留め」になっていることがある。

 

ミリ単位の小さな小さなねじとねじ穴は、それらを作る機械が高額なので

高額時計でしか「ねじ留め」のものは見られない。

 

そのなかでもさらに高額な時計のなかには「両ねじ」のものが、たまに存在する。

 

「両ねじ」????????

 

「両ねじ」とはいったい何か?

 

 

例えば時計屋が、ブレスレット部にねじ頭を発見して、

あ、この時計はねじでブレスレットの長さ調節するタイプだな、と思い、

ねじを精密ドライバーで回しても、空回りするばかり。

ん?と思い、反対側を見ると、同じようなねじが。

今度はそちらを回すと、やはり、空回りする。これが「両ねじ」である。

まるで妖怪譚みたいでしょ。

 

まず、小さなねじを作ったと思いねえ。棒の部分の長い、小さなねじ。

その細い細い、ミリ単位の小さな「棒」の一端にねじ穴を作って(「メス」の側)、

反対側はそれに入れる「オス」のねじをまた作る。「オス」と「メス」、それで一対。

そういう「棒」が、「割りピン」のかわりに、入っている。

言葉だけで説明するのはとても難しいのだが、「両ねじ」とはそういうものなのだ。

要は、お互いがお互いのストッパーになっている。

 

 

だから、反対側を精密ドライバーで押さえたまま、そのまた反対側のねじを回さないと、

ねじは永遠に緩まない。

 

ミリ単位に小さいからそれが、やりにくいの何の。

 

まるで「嫌がらせ」のような機構なのだ「両ねじ」って。

 

おフランスの「カルティエ」の時計にこの機構は多い。当然、とても高額である。

一世を風靡した「フランクミューラー」の時計のブレスレットも確か、そうだった。

それを調整するときには当然だが、ねじ頭にすら傷をつけてはいけない。

ねじ頭も鏡面処理してあって、ピカピカなのだ。厄介なことこの上ない。

 

これが「両ねじ」。

 

 

 

 

 

 

この、

「逆ねじ」と「両ねじ」。

 

 

大きさも強度も、その存在意義も、全然違うのだけれど、語感だけはちょっと似ているのが可笑しい。

 

 

はっきり言って、どーでもいい話なのだけれど、

 

 

「逆ねじ」と「両ねじ」、どちらにも翻弄されたような人間って、

案外少ないかもな・・・・・・・・・・・・・・などと思い、

ここに書いてみようと思った。

 

 

初デートで延々こんな話をした、としたらきっと確実にフられるであろうことは想像に難くない。

 

 

うーん。

 

 

 

でも君は、

 

 

僕のことをフらないでください。

 

 

 

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする