創作

2011-05-19 20:35:06 | Weblog






俺達はまるで影法師みたいに

薄く引き延ばされて、

あっちの街からこっちの街へと、

引越しを繰り返したものだった。


思い出や荷物は増え放題に増えてゆき、

いつしか、俺達の手に負えるものではなくなっていた。





男「俺はただ、ミノムシになりたかっただけなんだ」

女「ミノムシ?」

男「そうさ、見たことあるだろ?

中身はただの小さなイモムシなんだけど、

そいつが身体の回りを固めるんだ、

枯れ葉に唾液をつけて、びちょびちょなうちに巻きつけて」

女「やめてよ!汚い」

男「汚い・・・って、

他にどうしようがあるって言うんだよ、ミノムシに?」

女「そんなの知ったこっちゃないわよ」

男「ミノムシの身にもなってみろよ」

女「絶対・嫌・もう出て行く」

男「・・・・・・ははは、嘘に決まってるだろ?

ミノムシなんてどうでもいいんだ、俺が本当になりたかったのは

海の浅瀬でじっとしてる、貝なんだ」

女「・・・暗っ」




夜は今や、幾億回目かの始まりを迎えようとしていた。

俺は果たして、明日の朝は何になっていることだろう?

望み通りに・・貝か?

それとも、小さな小さな

プランクトンの中の一匹だろうか?








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