「よくあること」なのだ、そんなの。
そんな風に思う。
俺達なんてびっくりするぐらい平々凡々な人生で、
ろくでもないヘマをしたり、ずっこけたり。
陰口を言われたり、面と向かって怒られたり。
ピンポイントで雨に降られたりとか。
でも本当にそんなの、誰にだってあることなのだ。
全然特別ではない。
と思う反面、
この時代のこの一瞬を
同じ場所で体験出来たのは他でもない、
俺達だけじゃないか、とも思う。
君がまだ少年だったころに出会えて、
一緒に成長して、一緒にいろんなところを旅した。
俺達は特別な存在なのだ。
どんな小説を読んでも、俺達が経験したようなことは
書いてなかった。
そりゃそうだ、だって本当に、
想像を絶するような出来事の数々だったんだから。
思い出したくないほどひどいことが起こったし、
有頂天になってしまうようなことも起こった。
現実に起こったことすべてが、
今となっては俺の中に 混沌のようにうずまいて
巨大なガス体のようなものになって在り続ける。
そして今は五月の半ば近くで、
俺は六月のことを考えている。
この季節になると、二十数年前のことをどうしても
思い出さざるを得ないのだ。
「よくあること」の真逆だった出来事のこと。