いつだってその場限りで、
どんな事だって泡のように消えていった。
それは何の記録にも残っていない。
記憶の底にしか もう、存在しないのだ。
不吉な花火、もしくは突発的な暴発みたいに。
地上40階から落とされたグランドピアノのように
壮絶な音を立てながら、
粉々になってしまった運命みたいに。
何度でも繰り返した台詞みたいに。
もう二度と開くことのない心の扉みたいに。
一秒ずつ時間に溶けて、
輪郭さえぼやけてゆく君への思いのように、
すっからかんになってしまった夜の終わりみたいに。
まったくまるで手に負えないのだ、
こればっかりは。
僕はほんのささやかな歴史の目撃者として、
沈み始めた船に偶然乗り合わせた者として、
ある角度から見た真実の証言者として、
追憶の中に生きる夢想者として。
誰一人、何一つ。
まだ容認出来ないでいる。
少なくとも、
このことに関しては。
22年前の昨夜は、
土砂降り雨だったはずだ。