まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

鉄の町釜石へ

2008年09月22日 | 旅行記B・東北

JRの乗りつぶしを目指す中、本州の中で最後まで残っていたのが岩泉線と、山田線の宮古~釜石間。そろそろこの区間も片付けなければということで、出かけることにした。

今回使用するのは「岩手・三陸フリーきっぷ」。往復の東北新幹線の指定席に、一ノ関から北の岩手県内がフリーエリアとなる。中でも三陸鉄道全線、いわて銀河鉄道、青い森鉄道もフリー区間であり、県内を鉄道で移動すればすぐに元が取れるというもの。期間限定発売であるが、使い勝手がよさそうである。

P9203064_2朝の「やまびこ」で降り立ったのは、盛岡の一つ手前の新花巻。釜石線との接続駅である。新幹線から釜石線に乗り換える客は一旦改札の外に出て、駅前をとぼとぼ歩いて、ホーム1本きりの乗り場にたどり着く。「たまたま新幹線と釜石線が交差するところなんで、とりあえず駅をつくっておきました」という感じの存在感である。それでも大勢の乗り換え客がおり、ホームはちょっとした賑わい。

やってきたのは快速「はまゆり」。あらかじめ購入していた指定席車に乗り込む。リクライニングシートを使用しており、快速といえどもなかなかのサービスである。

P9203067花巻が宮沢賢治ゆかりの地ということもあってか、この釜石線、「銀河ドリームライン」という愛称がつけられている。各駅にも「銀河鉄道」を意識して、駅の名前にちなんだ愛称がつけられており、観光客の目を引いている。最近の発想としては「釜石線」という鉄臭い名前よりは、「ドリームライン」のほうが受けるのだろう。

新花巻からは奥深い山岳地帯を走り、遠野の盆地に出る。そろそろ水田も収穫の時期を迎え、黄金色の風景が広がる。遠野といえば馬小屋を併設した「曲がり家」が有名であるが、その名残か、独特の形をした家がその中に点在する。日本の農村の原風景といったたたずまいである。

P9203071遠野で半数以上の客が下車。遠野物語の風情に触れることのできる町並みを歩いてもいいのだが、ここは釜石を目指すことにする。ここで盆地とは別れを告げ、再び深い山の中に入る。仙人峠とよばれるこのあたり、小さな無人駅を次々に通過する。大きなヘアピンカーブを下り、かつての終着駅であった陸中大橋を経て、釜石に到着。

「釜石」と聞けば「新日鉄釜石」というのがイメージされる。かつての地理の時間には必ず登場していた地名、港の高炉、そして松尾雄治らを擁して強さを誇ったラグビー部・・・。その一方で、産業構造の変化による高炉の閉鎖、ラグビー部の解散など、「銀河ドリームライン」の「ドリーム」は「兵どもが夢の跡」かいなという面もある。

P9203089現在は三陸海岸の観光地、魚の町としてのPRを行う中、新日鉄釜石も線材などの製造で町の経済を支えている。そしてラグビー部は「釜石シーウェイブス」という、ラグビーのトップイースト11所属の地域密着型クラブに生まれ変わっている。サッカーでいえばJ2という位置づけになるのかな。野球のBCリーグを見ていても思うのだが、スポーツクラブというのは地域の人たちを一体にする力があると思うし、そういう町を訪ねてみることにも面白さを感じている。地方紙や地元のローカルニュースではそのチームの話題も取り上げられるしね(このあたりは東京や大阪近郊では逆に難しいところだ)。

P9203078ここから初乗りの山田線ということになるが、それまで時間があるので見学と昼食の時間とする。まず、製鉄所の敷地に向かい合う位置のバス停から向かったのが「鉄の歴史館」。一度訪れたことのあるところだが、やはり鉄の町としての歴史を見るならここである。

P9203081近代製鉄発祥の地となった釜石であるが、その大きな要因となったのが、釜石の山で採掘できる鉄の種類。それまでは主に砂銑鉄から刀や鉄砲などをこしらえていたのだが、幕末となり西洋に対抗するための頑丈な大砲を造ろうとしたところ、砂銑鉄はヤワであるとして、鉄鉱石から銑鉄を造る、ということになった。その鉄鉱石が採掘できたのが釜石の山奥で、さらにリアス式海岸の良港を持つことから輸送拠点にも適していたという。以後時代はかわり、経営者の交代や震災・戦災を受けながらも、近代産業を支える鉄の町として発展を続けることとなった。こういう近代化の歴史紹介を見ていると時間があっという間に過ぎる。

P9203084その歴史館からはちょうど釜石大観音も見える。その先の海の景色もと思うのだが、この日は雨が降ったりやんだりという天候で眺望は今ひとつ。ここから再びバスで釜石駅に戻る。ここで昼食とする。

P9203087駅前にはサン・フィッシュ釜石という、観光客向けの市場があり、釜石の海産物や山の幸などを多く販売している。目立つのはうに、いくら、ほたてといったところ。そして、それらを詰めた海鮮丼を食べさせる食堂が同じ建物の2階にある。昼食はそこで、ということで行ってみると、大勢の待ち客。窓ごしに中をのぞいてみるとテーブルに座っているものの出来上がりを待つ客がたくさんいる。順番待ちの紙に名前を書いてしばらく様子をうかがっていたが、どうも料理のできるペースが遅い。普通、丼ものといえばそれほど調理に時間がかかるものではなく、小鉢類もどのメニューも同じくついてくるのだから早くできそうなものだが・・・。

P9203088このままでは予定の列車に間に合わなくなるとして順番待ちの名前を消して、再び1階の市場へ。するとその一角にうどん・そばのカウンターがあるが、その中に「釜石のいくら丼」というのがちゃんとメニューにあった。ということでこちらを注文。すると2分と経たないうちに、味噌汁代わりのミニうどんと一緒に出てきた。そういうもんでしょう。味のほうは2階の食堂のほうがいいのだろうが、丼としてはこちらも悪くない味。うどんの中のわかめも、三陸の本場ということでいい香りがしていた。十分おいしくいただく。

駅に戻り、釜石シーウェイブスの後援企業でもある「浜千鳥」のワンカップを買い求め、山田線の客となる・・・。(続く)

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