まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

D51使用の「SLやまぐち号」に乗りに行く

2024年07月19日 | 旅行記F・中国

7月中旬の3連休、いろいろな所用があったのだが15日の海の日は体が空くことに。さてどうしようか・・。

このところ、日帰りで中国・四国への「乗り鉄」も楽しんでいるが、山口県が少しご無沙汰である。そこで思いついたのが、「SLやまぐち号」の乗車である。「SLやまぐち号」といいつつも、2022年に肝心の蒸気機関車C57、D51に故障が相次ぎ、それ以降はディーゼル機関車DD51が牽引する「DLやまぐち号」として運転された。まあ、機関車が牽引する客車列車に乗ることじたいが今や貴重な体験で、それはそれで人気を博していた。

その「SLやまぐち号」、今年5月の連休からD51の牽引で復活したという。ここは一つ行ってみようか・・。

ただ、九州北部から山口県、さらには中国山地にかけては大雨の影響で運転見合わせ、あるいは終日計画運休の路線が目立つ。15日も雨予報で、山口県内でも岩徳線、宇部線、錦川鉄道などで計画運休とある。ちょっと出かけるのがためらわれるが、山口線は運行のようだ。ネット予約の指定席を別の日に変更しようかと「e5489」を検索するが、8月中旬まで軒並み満席である。これは当初の購入どおり15日に行くべしということとして、広島から新幹線に乗る。

新山口到着。小雨である。ただ、ホワイトボードには列車運休のお知らせ。山間部を走る岩徳線が運転を見合わせるのはわかるが、近郊区間を行く宇部線が全線運休というのは・・?

その後、「SLやまぐち号」車内での飲食物を仕入れたり、種田山頭火の像を見たりする。

さてホームに下りると、すでに大勢の人が「SLやまぐち号」の入線を待っている。ここはいったん、入線する1番線の隣、2番線のホームに向かう。こちらからのほうが、列車全体、そしてD51の動輪も含めた姿を見るのに適している。

D51が押す形で、展望車を先頭に客車が入線する。そして後ろ向きに姿を現したD51。

私にとって、この機関車が単独で牽引する列車に乗るのは初めてではないかと思う。かつて「貴婦人」とも称されたC57 1号機はもはや現役復帰は難しいとされる中、もう一人のベテランが元気に戻った形である。

発車前の一時、雨にも関わらずホームは賑わう。D51を前に記念撮影する人も多いが、ちょうどこの日はクラブツーリズム、そして阪急交通社による日帰りツアーが企画されていたようだ。各地から新山口に集結し、「SLやまぐち号」に乗車。そして津和野での豪華昼食とフリータイムの後、帰りは特急「スーパーおき」に乗るというプラン。

停車中の客車を一通り回る。前寄りの4号車、ここはほぼツアー客で占められた車両だが、車内に入るとやけに熱気・・というより蒸し暑さを感じる。その時はツアー客たちの熱気のせいかと思ったが、発車後の車内放送で、この車両の空調が故障していたとあった。車内温度調整のために窓を開けて外の涼しい風を入れてください・・とあったが、外は雨だし、またこの先トンネルの多い区間では煤煙が入らないように窓を閉めろと言われる有様。

さて私が陣取ったのは3号車。こちらにもツアー客の一部が出ていたが、乗車前の空席検索を見るに、なぜか私のいるボックスだけ他の相客なし。図らずして、津和野までボックスを貸し切る形で行くことになる。よしよし。

10時54分、遠くで汽笛が鳴る中、ガタリという客車独特の初動で発車する。ホームからは大勢の見物客からの見送りを受ける。まずは湯田温泉を経て山口まで、国道9号線とも並走し住宅地が並ぶ中を走る。沿線の人たちも「SLやまぐち号」の到着時刻を見計らって家の前に出て手を振る。

湯田温泉を経て山口に停車。新山口から乗って湯田温泉、山口で下車する人もいれば、湯田温泉、山口から乗車する人もいる。湯田温泉や山口から乗って津和野に向かうならともかく、新山口から乗って湯田温泉、山口で下車とは何とも贅沢な乗り方だと思う。というのが、2024年3月以降、「SLやまぐち号」についてはそれまで普通車の指定席料金が530円だったのが1680円、グリーン車の指定席料金が1000円だったのが2500円と一気に倍以上跳ねあがったからである。普通車の指定席料金は、新山口~津和野間の特急「スーパーおき」とほぼ同額である。このところさまざまなものの値上げが家計を直撃して・・と報じられるが、「SLやまぐち号」については、あくまで「快速」列車の扱いだったから指定席、グリーン料金もその水準だったが、やはり蒸気機関車の維持管理の費用を考えればここまでの値上げも致し方ないだろう。ツアー客、個人客それぞれでほぼ満席だし、沿線の撮り鉄を含めて外からの客を誘致できているから・・。

山口から宮野を過ぎると、最高25パーミルの上り勾配に差し掛かる。同じ山口市内ではあるが国境をまたぐかのようである。D51は急に速度を落とすが、その分力を入れるために蒸気が吐き出される。そして定番スポット、あるいはゲリラ的スポットで多くのスナイパー・・もとい撮り鉄どもが出没する。全身ずぶ濡れになりながらこの車体を追いかける様って、正直何なん??

その上り勾配で一息つくのが仁保。ここでは給水のほか、石炭を機関室に近い位置に寄せる作業のため数分停車する。ここに来て雨も本降りとなる中、作業が進められる。蒸気機関車を動かすということはこうした作業がついてくることでもあり、それを考えると「SLやまぐち号」に特別な料金が設けられるのもこのご時世、むしろ正当なことではないかと思う。

改めて窓を閉めるよう案内があり、仁保から篠目へと高度を上げる。そして、かつての給水塔も残る篠目に到着。ここで、津和野方面からの特急と行き違う。

この時は単に「特急と行き違いか」とくらいにしか思っていなかったが、改めて時刻表を見ると、行き違ったのは米子発新山口行きの「スーパーおき1号」。大雨の影響で大きく遅れており、篠目到着時点では3時間近く遅れていたものと思われる。

そして、われらが「SLやまぐち号」も篠目で予定以上に長く停車する。ちょうど雨脚も強まって来た。さすがにこの小さい駅で運行を取りやめるとは思わないが、この先津和野への到着は遅れることになる。同じ車両にいたツアー客の添乗員が電話をかけている。おそらく相手はこの先ツアーの津和野到着後、昼食場所として手配している料理屋だろう。

山間の小駅に蒸気機関車に牽引された客車が佇むというのも、昔の汽車旅好きにはたまらない光景だろう・・・。

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