1月9日、岡山から瀬戸大橋を渡って高松に着き、高松から高徳線の徳島行きに乗る。この先は高徳線、牟岐線と乗り継いで阿波海南に向かい、DMVに乗って道の駅宍喰温泉を目指す。
高松から乗るのは10時02分発の徳島行き。列車は2両編成だが、後ろ1両は回送扱いで乗車できないとの案内がある。高松まで来る便は乗客がそれなりにいるが、折り返しとなる便は乗客が少ないからそのような対応をするのかな。また、1両目の後側となる乗車口で待つように言われる。ワンマン運転の場合後乗り前降りだが、始発駅の場合は両方の扉から乗れるものと思っていたが、そこは四国のほうがきちんとした対応を取っていると言える。
やって来た列車は折り返しではなく、一時ホームから外れたところで待機していたのか、乗客がないままに到着した。前1両、客扱いとして運行するのは1500型。扉が開いて中に入る。転換クロスシートを備えていて、無事に席を確保する。これで徳島までの長丁場も快適である。発車時刻が近づくと乗客も増える。ワンマン運転といいつつも、添乗指導らしき係員がもう1名乗務している。
乗客の中には遍路の金剛杖、菅笠を手にした人もいる。東に向かう高徳線に乗るということは、屋島寺や八栗寺なら琴電で行くはずだから、その次の志度寺に向かうのかな。そして志度寺~長尾寺~大窪寺の最後3ヶ所を歩くとか。私は志度寺~長尾寺、長尾寺~大窪寺と2回に分けて歩いたが(長尾に着いた後で瓦町に戻り、1泊した翌日に再び長尾に来た)、これを一気に通しとなるとそれなりに時間がかかる。この時間からだと、大窪寺まで行って夕方のコミュニティバスに間に合うか、あるいはそのまま周辺の遍路宿に泊まりか。見た感じでは何巡もしてそうにお見受けしたが。
まずは高松市街地の西側をぐるりと回り、栗林を過ぎる。左手には屋島、五剣山の姿が少しずつ近づく。やはり八十八ヶ所めぐりの時のことを思い出す。2019年2月に結願して以降、四国にはそれほど足を踏み入れておらず、札所めぐりも行っていないが(あえて避けようとしていたところもある)、こういうスポットが固まるところに来ると何だかむずむずしてくる。やはり、どこかで2巡目に手を付けることになるか、それとも・・。
志度で、お遍路姿の人も含めてそこそこ下車があるが、まだ座席もほぼ埋まっている。志度からオレンジタウンを経て造田に向かうルートも遍路道に近い。
この後も穏やかな車窓が続き、行き違い・通過待ちで数分停車する駅も過ぎながら、県境に近い引田に到着。ここで下車する人もいるが、高松からずっと乗っている人も意外に多い。徳島まで2時間半以上の道のりだが、青春18きっぷの人もいることだろう。15分停車ということでいったん駅の外に出る。引田は醤油の醸造で知られるところ。
讃岐相生から大坂峠をトンネルで抜け、徳島県に入る。今度は八十八ヶ所の霊山寺から始まる発心の道場である。
鳴門線と接続する池谷からは多くの乗客があり、1両の車内は満員となった。あくまで後乗り前降りのため、乗ったら前へ詰めるよう案内がある。
吉野川を渡り、12時44分に徳島着。駅前には晴れ着姿の人をちらほら見かける。ちょうど成人の日絡みの連休ということで、こちらでも成人式が行われたようだ。徳島市ではコロナ対策として成人式の日程を分散し、かつ会場も地区ごとで分けているとのこと。
次に乗るのは13時30分発の阿波海南行き。店で昼食を取るにはちょっと時間が中途半端ということで、コンビニで仕入れる。こちらの列車も2両編成だが後の1両は回送扱い、また乗車口も1両目の後部に限定している。あわてて並びなおす。
列車の入線を待っていると「あんたも海南に帰るん?」と、前のご婦人から声をかけられる。大きな荷物を持っていたからだと思うが、いや、帰るというよりこれから行くほうで・・。「DMV」という単語を出して通じるかなと思ったので、「『新しいバス』に乗りに行くので・・」と答える。すると納得したような顔になり「何かお客が多くて積み残しも出ているようじゃったよ」と話してくれる。それについては対応済なので、また後で触れることにする。
「写真撮って、しっかり宣伝してくださいな」と言われ、やって来た車内に入る。いや、ごく数人くらいしかご覧にならないようなローカルブログでどこまで宣伝になりますやら・・・。
列車は徳島線からの直通で、乗るのは先ほどと同じ1500型だが、徳島でほぼ全ての乗客が降りたこともあり無事に2人掛けのシートに着席できた。徳島ではほぼ満席で発車したが、この先は行き止まりなので乗って来る客は少ないだろう。まずは市街地の南側を走る。
牟岐線では2019年3月から、JR四国としては初めての「パターンダイヤ」を導入している。日中の時間帯、徳島発を毎時00分、30分に統一するとともに、途中の阿南までの本数をそれまでより増やした。いっぽうで阿南~海部(当時。現在は阿波海南)間は減便して、その代わりに並走する大阪~室戸間の高速バスの阿南~甲浦での乗降を可能にすることで、バスとの連携を取るようにした。お互いに厳しい鉄道とバスの連携ということで注目されたが、3年が経とうとする中で効果のほどはどうだろうか。
中田からはかつて分岐していた小松島線の跡を見る。次の南小松島からは新聞を持ったおっちゃんたちが乗って来る。そういえば近くに競輪場があったな。
那賀川を渡り、阿南に到着。牟岐線の途中の有人駅である。列車の半数がここで折り返しとなる。私が乗っている阿波海南行きは14時21分発だが、その後だと16時28分発までない。そうすると阿波海南に着くのが18時前で暗くなってしまう。岡山から徳島の南部まで、鈍行移動だとまさに1日がかりだ。
この先も道のりは長い。八十八ヶ所めぐりでいえば第21番の太龍寺を終え、第22番の平等寺、第23番の薬王寺へと続くところ。平等寺から薬王寺までは20キロあまりあり、歩き遍路だと6時間ほど要すところ。しばらく山道を走り、由岐から田井ノ浜にかけて一瞬だけ海が顔を出す。
その薬王寺の瑜祇塔がちらりと見え、日和佐に到着。八十八ヶ所めぐりの時、室戸を含めた一帯の札所をめぐったが、その時ベースキャンプにしたホテルも見える。薬王寺で年越し、初詣をしたのも思い出だ。その薬王寺には翌日の帰りに立ち寄る予定にしている。
ここまで来ればもう一息。国道55号線と並走して牟岐に到着。弘法大師ゆかりの鯖大師のある鯖瀬を過ぎ、15時38分、阿波海南に到着。ここからいよいよ、DMVへの乗車である・・・。