まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

DMVに初乗車~阿佐海岸鉄道へ

2022年01月23日 | 旅行記G・四国

牟岐線の終点である阿波海南に到着。ここからいよいよDMVに乗り換えとなる。もともと牟岐線は次の海部までの路線で、海部から甲浦までが阿佐海岸鉄道阿佐東線として営業していた。DMV開業にあたり、海部が高架駅で地上との接点がないこともあり、阿波海南~海部間をJRから譲り受けて阿佐海岸鉄道に編入した。

ホーム1本だけの阿波海南で下車する。牟岐線の線路に車止めが設けられ、鉄道の線路としてはここで行き止まりであることを示す。その向こうにはかつてと同じ線路が伸びているが、その間はコンクリートで舗装されている。

すぐ横にある海南駅前交流館に向かう。ここが事実上の駅舎で、DMVはここから発車する。手前に乗降場があり、その先に道路走行区間と鉄道区間の境界であるモードインターチェンジが設けられている。あたりにはカメラを構えたギャラリーが陣取っている。

DMVの起点は駅の北にある阿波海南文化村で、次の阿波海南発は15時33分発である。国道55号線から青い車体が入線して、まずは乗降扱いのために停止する。運転手が降りてきて、「予約の方から先に乗車いただきます」という。座席番号と名前を告げると「どうぞ」と着席を促される。

このDMV車両、見た目は先頭部の長い、ちょっと大きめのマイクロバスである。座席定員は18名(プラス立席扱い4名)で、中央は1-2列シートだがやはり狭い。なお、1人掛けシートの前2列には黄色のカバーが掛けられ、優先席となっている。気動車と比べれば定員は大きく減ったが、逆に言えばそれだけでも十分まかなえてしまうだけの乗客しか見込んでいないようにも見える。これまでも、牟岐~甲浦間は路線バス(徳島バス)も運転されているし・・。

一方で、地元海陽町や高知県東洋町は「世界初」が走る町とPRして観光利用を促進しており、また開業してすぐということもあって、私のような者が遠方から乗りに来る。そうなると18名定員で大丈夫かということになる。そこで阿佐海岸鉄道が推奨しているのが事前予約。全国の高速バスの予約システムである「発車オーライネット」で2ヶ月前から予約を受け付けている(座席指定可、事前カード決済)。他には有人の宍喰駅で乗車券を買うか、途中の駅・停留所からだと、空席があれば予約なしでバスと同じように整理券を取って乗ることができる。開業当初は予約なしの客が積み残しになる便もあったそうだが、私が利用する9日、10日の予約状況を見ると、ほとんどの便で3分の1~半分くらい予約済のようだった。

予約なしの客も後から着席することができ、ほぼ満席でギャラリーの見送りを受けて発車する。道路からモードインターチェンジがある線路の上に乗る。「モードチェンジ、スタート」の声とともに、賑やかなお囃子が流れる。さすが徳島ということで阿波踊りの一曲だという。この時車高が上がったが、前後で鉄道用の車輪が現れて、レールの幅に合わせてセットされた。その間、わずは10秒あまり。運転手が各部位の点検、呼称を行っていよいよ出発だ。

やがて元の牟岐線~阿佐海岸鉄道の線路に合流する。その昔、第三セクター線を中心に導入された小型の気動車を「レールバス」と呼んでいた時期があったが、先ほどまでバスとして走っていた車両が文字通り「レールバス」として線路の上を行く。

普通、電車や気動車に乗ると、線路の継ぎ目の音を文字で示すなら「ガタン、ゴトン」といったものである。ただ、このDMVの鉄道モードで線路の継ぎ目を通過する時は「タン、タン」という音がする。トロッコにでも乗っているかのようだ。阿佐海岸鉄道は第三セクターとして新たに建設されたこともあり、基本的に踏切はない。高架橋とトンネルでずっと通過していく。

トンネルもかつてのものをくぐる。かつての気動車には車内に手作りのイルミネーションがあり、トンネル内で点灯するサービスもあった。ただ、小型のバスでは特に演出もなく、そのまま走り抜ける。

海部に到着。ホームの向かい側には気動車が停まっている。現在、阿波海南でレールが途切れた形になっており、外に出ることはできない。かといって、線内を運行することもできないようだ。気動車はこの先の宍喰の先にもう1台停車しているが、これも同様である。他の鉄道会社で引き取り手があれば譲渡となるのだろうが、車両導入からの年数を考えるとこのまま廃車となる可能性が高いとのこと。

海部を過ぎて宍喰に到着。高架橋から、家並みの向こうにDMVの終点であり、この日の宿泊地である道の駅宍喰温泉の「ホテルリビエラししくい」の建物が見える。駅から歩けば15分ほどのところだが、ここはそのままDMVに乗っていくことにする。

高知県に入り、甲浦に到着。鉄道の時はここが終着駅で高架橋も途切れていた。DMV開業にあたり、高架から下りるための新たなスロープが設けられ、まずはその前でモードチェンジを行う。再び阿波踊りのお囃子が流れ、車高が下がってバスモードとなる。スロープを下りたところに停留所がある。

そのまま集落を抜け、国道55号線に出る。宍喰方面に戻ったところにあるのが海の駅東洋町。ここで下車する客もいる。家族で来ていて、子どもがDMVに乗って親がクルマで迎えに来る光景も見られた。国道55号線を南に行けば室戸岬方面に行くが、これまで阿佐海岸鉄道と高知東部交通バスは甲浦駅で接続していたが、DMV開業後はこの海の駅での接続となった。なお、DMVも土日祝日ダイヤでは1往復が室戸岬まで行く。

本格的なバスモードでの走りはここからである。こうして道路を走る分には普通のバスと変わるところはなく、むしろ安定しているように感じる。

再び徳島県に戻り、海に面した道の駅宍喰温泉に到着。折り返しの便に乗る人、あるいはギャラリーの出迎えを受ける。岡山を朝から出発してようやく目的地に到着した。

こうしてDMV初乗車を終えたが、アトラクションのような楽しさを感じて、面白いのは面白かった。新たにDMVを導入したことに対しては、同じ区間を移動するなら普通のバスでもよいのでは?という声もあるようだ。先に、公共交通機関の維持、観光振興、地域活性化・・などと書いたが、これらに加えてもう一つの要素として、南海トラフ地震による津波被害を想定したということがある。並走する国道55号線が被災した際、阿佐海岸鉄道の高架橋とトンネルを被災者支援に活用するとしている。

後はこの「世界初」の話題性がどこまで続くかである。ただ、阿佐海岸鉄道のDMVが軌道に乗れば、他の地区でも手を挙げるところが出るかもしれない。そうしょっちゅう来ることができるエリアではないが、これからも見守っていくことにしよう・・・。

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